経産省が個別企業の経営に手を突っ込んで失敗する例は枚挙にいとまがない。中でも有名なのが、傘下の官民ファンドだ。前述の産業革新機構は、手掛ける大型案件が「産業革新」どころかゾンビ企業の延命ばかりだと批判され、もう一つの官民ファンド、クールジャパン機構も面白ネタで使われる失敗が続き、税金をどぶに捨て続けている。

 死屍累々の日の丸連合と官民ファンドを見れば、経産省には、先端分野のビジネスやイノベーションに関する知見も洞察力もないことがよくわかるのだが、9月30日にはあっと驚くニュースが入ってきた。

「経産省が技術革新をうみ出す素地を持つ企業を選んで公表する」(日経新聞)というのだが、経産省が推奨する会社が市場から評価されると思っているのか。ブラックジョークそのものではないか。ここまで来ると開いた口が塞がらない。経産省に言いたい。

「頼むからもう何もしないでくれ」と。

週刊朝日  2019年10月18日号

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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