

大会屈指の遊撃手、韮沢雄也を擁して2017年以来2度目の全国制覇を目指した花咲徳栄(埼玉)が、初戦で敗れた。11日の全国高校野球選手権大会2回戦で、今春の選抜大会4強の明石商(兵庫)に3―4と競り負け、夢ははかなく消えた。
プロも注目する相手の2年生エース・中森俊介の対策は万全だった。
「速いボールに負けない。浮いたボールをたたく。実際に打席に入ってみて、打てないボールではなかったんですが」
強肩を生かした守備と巧みな打撃技術で、今秋のドラフト候補に挙がる韮沢は、そう悔しさをにじませた。
「中森対策」は実行できなかったわけではない。しかし、中森も試合後のインタビューで心がけたと口にした「メリハリをつけたピッチング」に、花咲徳栄打線はあと一本が出なかった。
「(中森投手は)要所を締めてきた」
韮沢がこう語るように、四回は3連打を浴びせながら、得点は6番・中井大我の押し出し四球の1点のみ。1点差で迎えた六回1死満塁も、三ゴロの間の1点に終わった。韮沢自身も安打と死球で四、六回の好機に絡んだが、後が続かなかった。
「展開は想像していた。競り勝つ練習はしてきた」
ベンチの雰囲気は良く、最後まで逆転できる自信はあったという。
1点差の九回、先頭の中井が出塁。続く打者が犠打で1死2塁と、一打同点のチャンスを迎えた。
「打てないボールじゃないぞ」
韮沢の打順はしばらく回ってこない。ベンチから叫んだ。
しかし、代打の南大輔、前の打席で本塁打を放った菅原謙伸が倒れ、ゲームセットとなった。
地方大会では49代表校中トップのチーム打率4割3分2厘を誇り、圧倒的な打力で埼玉大会を勝ち上がってきたが、今大会は3得点に終わった。
「自分がチームを勝たせたかったんですが」
全国制覇を成し遂げた17年、韮沢は1年生ながらベンチ入り。昨夏はレギュラーとして出場した。最終学年となり、その経験をチームに伝えてきた。だが、昨秋の県大会は3回戦敗退、今春の県大会は準々決勝敗退と、結果が出ずに苦しんだ。
「最初は勝てなくて、つらくて……」
それでも、今夏の埼玉大会は他チームを圧倒し、5年連続7回目の甲子園出場を決めた。韮沢自身にとっては3年連続の甲子園だった。
「甲子園まで連れてきてくれた監督、仲間に感謝です」
大学進学は、今は頭にないという。
「プロ志望届を出します」
中学時代に過ごした新潟を出て、花咲徳栄に入ったのも、プロ野球選手になるため。大会屈指の遊撃手は次の舞台を見つめていた。(本誌・田中将介)
※週刊朝日オンライン限定記事