[左]村本大輔(むらもと・だいすけ)/1980年、福井県生まれ。2008年に中川パラダイスさんとお笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」を結成。毒舌炎上芸人として人気を博し、13年「THE[左]村本大輔(むらもと・だいすけ)/1980年、福井県生まれ。2008年に中川パラダイスさんとお笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」を結成。毒舌炎上芸人として人気を博し、13年「THE MANZAI」で優勝。社会問題への発言を続けるなど、精力的に活動。ツイッターのフォロワー数は6月1日現在、約38万3千人/[右]田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。早稲田大卒。ジャーナリスト。東京12チャンネル(現テレビ東京)などを経てフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超える。ほか「激論!クロスファイア」が毎週放送中。『殺されても聞く 日本を震撼させた核心的質問30』(朝日新書)など、著書多数 (撮影/写真部・片山菜緒子)
田原総一朗さん(左)と村本大輔さん (撮影/写真部・片山菜緒子)田原総一朗さん(左)と村本大輔さん (撮影/写真部・片山菜緒子)
吉本新喜劇の舞台に登場した安倍晋三首相(左から2人目)吉本新喜劇の舞台に登場した安倍晋三首相(左から2人目)
 社会に疑問を投げかけ、著名人とSNS上で舌戦を繰り広げるウーマンラッシュアワーの村本大輔さん(38)。珠玉のネタを交えながらまくしたてるお笑い界の異端児に挑んだのはジャーナリストの田原総一朗氏(85)だ。安倍政権や沖縄問題について、タブーなしに切り込んだ。

【写真】吉本新喜劇の舞台に登場した安倍晋三首相がこちら

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田原:なんで村本さんは政治に関心があるの?

村本:政治じゃないですよ。政治ネタをすると言われるのも嫌で、普通の生活の話だと思っています。

田原:どういうこと?

村本:たとえば、沖縄の基地問題で言えば、ヘリの音がうるさいという話を聞きますし、僕の地元の福井県には大飯原発があって、福島のような事故があったら怖いと思う。どれも生活の話なのに、政治的な発言とくくられて、言いにくい風潮があると感じます。

田原:安倍晋三の批判はしないの?

村本:しますよ。最近、安倍総理が大阪のなんばグランド花月の舞台に出たんですが、これについて吉本興業と安倍総理の双方に言いたい。まず吉本自体がそもそも何のイデオロギーもなくて、「安倍総理が出るんですよ」「それくらい吉本はすごいんですよ」ということに安倍総理を使っているだけ。安倍総理は、「吉本新喜劇に出ますよ」「大衆の人たちに寄り添っていますよ」ていうことをアピールしてる。お互いが利用し合ってる。

田原:安倍さん、大阪行ったけど選挙は負けたじゃない。効果なかった?

村本:6月の首脳会議の告知で出たんですけど、笑福亭仁鶴師匠のギャグ「四角い仁鶴が丸く収めます」を言ってスベったんですよ。もうちょっと面白くしろと。吉本新喜劇に「乳首ドリル」っていうギャグがあるんですよ。一人の芸人が棒で、もう一人の芸人の乳首をグリグリやる。グリグリされた芸人は「乳首ドリルすんな」と言って棒を手で払う。そのやりとりを何回も繰り返して、最後はグリグリしそうでしない。されてた芸人は「すると思ったらせえへんのかい」と言って終わるギャグです。そのとき、安倍さんに棒を持ってもらって、沖縄出身の芸人と「辺野古埋め立てんな」と繰り返して、最後に「普天間返す思たら返さへんのかい」というやりとりをすれば、お客さんは沸くと思うんですよ。

田原:面白いじゃない。

村本:そういうのをやれと。

田原:安倍さんは、沖縄の県民投票で7割が辺野古埋め立てに反対しているのに、なぜ無視するの?

村本:うーん、まったく無視していますね。

田原:対米従属だよ。アメリカに反対したら自分の立場が危なくなるから。

村本:日米関係について言えば、西部邁さんが日本はJAP.COMというアメリカの子会社だと言っていました。

 
田原:日本がアメリカの植民地だと言ってるんだね。アメリカの言うこと聞くほうが日本は得だと、自民党の歴代総理は思ってる。

村本:日米合同委員会で決定された米軍訓練区域の変更で、JALやANAとかの飛行機も飛行制限区域が変更されたわけでしょう。いつか、五輪で聞く「国と地域」という表現に日本も含まれるんじゃないかと。台湾を地域と言いますけど、アメリカからしたら日本も地域になってるのかもしれないってたまに思うんです。

田原:僕は安倍さんに日米地位協定を改定しようと言っている。かつては、イタリアもドイツもフィリピンも対米地位協定があって、冷戦後、どの国も改定した。日本だけ改定できていない。

村本:河野太郎外相が日米地位協定を比べる時点でダメだ、その国にはその国の地位協定の形があるんだというようなことを言っていました。

田原:それは弁解。安倍さんに改定しようって言っても、いい返事をしないのはアメリカ受けしないから。完全に対米従属だよ。

村本:対吉本従属と一緒です。これを言うと舞台の数を減らされるのではと思ってしまって、吉本の芸人はついていくしかない。

田原:村本さんが安倍批判をすると、なんで吉本は怒るの?

村本:クレームが怖いからですね。例えばローラが辺野古埋め立て反対と発言した時、高須クリニックの高須克弥が「俺がスポンサーだったらCMから降ろす」ということを発言しました。

田原:それは高須クリニックが悪い。

村本:ほかにも佐藤浩市さんが映画「空母いぶき」のインタビューで、「首相役をお腹を壊すキャラに設定した」「体制側の立場を演じることに抵抗がある」というような発言をしたら、作家の百田尚樹が「三流役者」「俺の小説が映画になったら使わない」と。

田原:幻冬舎が、百田の本を批判した作家の本を出さないというような騒動もあった。

村本:安倍さんを信奉している人たちは過激で、すがっているものを批判されると不安になるんだと思う。宗教者が信じている神様を批判されるのと同じで。この言論の自由の時代にものを言えない人はいつの時代も言えないと思います。

 すごく怖いのは、政治の議論をしっかりしないと、勝手に一部の人が言いたい放題して、自分の歴史を本当の歴史かのように作ってしまうということ。みんなが当たり前に議論しないと、勝手に歴史を作るやつがいる。歴史を作らせちゃダメなんですよ。

田原:だから村本さん頑張ってよ。

村本:最近、面白い話を聞きました。テレビ番組を作っている人が、昔は「ここがヘンだよ日本人」という番組とか、日本を馬鹿にする番組がすごく数字が取れたが、今は日本はすばらしいとか、日本ここいいよねっていう番組じゃないと数字が取れないと。

 
田原:最近日本で売れる本というのは、韓国と中国の悪口。ニュースもメディアもそう。それは日本人が自信を失ったんだよ。

村本:なぜ自信を失ったんです?

田原:具体的に言うと、平成元年の1989年には、時価総額で世界トップ20社の中に日本は14社入っていた。トップ50社には32社入っていた。去年、トップ30社の中に日本はゼロ。日本でトップのトヨタが35位だよ。平成元年に1人あたりのGDPが世界4位だったけど、今は25位。会社の時価総額もGDPも給料も落ちて、どうしようもなくなった。自分に自信がなくなると悪口を言う。村本さんは自信があるから人の悪口言わない?

村本:言いますよ。今日もマイクの前で相方の「中川パラダイス」の悪口を言いました。僕が作ったネタをしゃべって金をもらってるから、「操り人形のギャラ泥棒」だと。国会にいる政治家も一緒で、「官僚の操り人形のギャラ泥棒」。

 安倍さん批判で言えば、尖閣諸島とかに触れないのは中国とうまいことやるためです。それはテレビタレントとかCMのイメージキャラクターと同じで、スポンサーの望むことをやっているだけ。総理大臣ですら。北朝鮮問題も、トランプ大統領が圧力をかけると言ったら安倍さんも圧力かけると言って、対話だって言ったら、対話だって。これが日本の「#MeToo」問題だと思うんですよね。

田原:いきなり記者たちに向けて、前提条件なしに金正恩に会うと言った。それまでは明らかに対決だと言っていたのに豹変した。

村本:豹変というかパフォーマンス。好きな女の子にディズニーランドに連れていくと一応約束したら信じてくれる。それをずっと繰り返してるんです。拉致問題解決するからなと、いいことばかり言ってるけど、いつやるんだと。国民はなぜか、やってくれるんだとだまされてる。

田原:なんでそういういい加減な安倍内閣の支持率が高いんだろう。

村本:ちょうどいい総理大臣なんじゃないですか。国民は自分たちが良ければいいと思っている。沖縄にしても原発にしても、しょうがないだろうで終わらせれば、自分たちが危険な目にあわなくて済む。福島の原発事故があった時、東京の人は「原発は危険で福島がこうなっちゃうんだ」ではなくて「東京まで放射能は来ないんだな」と言ったんです。そこかよ!と思いました。そういう国民が多いことが恐ろしい。

(構成/本誌・秦正理、田中将介)

【>>後編「村本大輔の“電気グルーヴ”ネタがブラックすぎ!」に続く】

週刊朝日  2019年6月14日号より抜粋