──作品の多さにもびっくりしましたが、すべての作品に、キャプション(説明)がついています。相当時間がかかったのでは。

 キャプションをつけるのって、大変ですよね。今回もパリの個展でつけたのはそのままで、ちょっと増やすくらいの気持ちだったんですけど、音声ガイドがない、というのがぎりぎりでわかりまして。それで急遽、全部につけようと。

──しかも、一つひとつ凝っていて、作品に合わせてある。読むだけでも面白かったです。ネガティブなことも隠さず書かれていて。

 アイドルという職業柄、ネガティブというか、暗い言葉って、あんまり言う場所がないんですよね。人生疲れたよ、とアイドルがいきなり言い出すとおかしくないですか(笑)。でも「この作品はこういう思いで描いたんだ」なら、ストレートに表に出せる。

──「Naketekurukara Waraketekuru(泣けてくるから、笑けてくる)」というタイトルの作品があって。確かにこの言葉、アイドルは言わないですよね。

 言う場所ないですよ(笑)。でも、本当につらいことがあるから、うれしいときは思い切り笑える。アートだけでなく、人生って、そういうものなんじゃないかな。

──アート活動って、香取さんにとって、どんなものですか?

 この1年半で、アーティスト活動にもだいぶ慣れてきました。最初は難しかった。これまでは好きで描いてきただけなので。雑誌の表紙や、東京ミッドタウン日比谷の入り口に飾る絵、ラッピングカーのデザインと、たくさん依頼を受けたんですけど、最初は依頼を受けて描くことがなかったので、やっぱり大変でした。締め切りもあるし、縛りもある程度あるし。

──依頼されて描くのと、自由に描くのは、やっぱり違いますか。

 けっこう違うものですね。自由に描きたい思いもあるけど、依頼を受けるのは期待されているわけで、うれしいことでもあるし。今回の個展で、依頼を受けて描いたもののほうが「いいね」と言われると、ちょっと悔しい。「大勢の人が見てくれるな」と想像しながら思いながら描くから熱量が多いのかな……。

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