相続対策のセミナーが各地で開かれている(写真と本文は直接関係ありません) (c)朝日新聞社
相続対策のセミナーが各地で開かれている(写真と本文は直接関係ありません) (c)朝日新聞社

 相続税対策の一つに「死亡保険金の非課税枠」があるが、「円建て」保険商品が使いづらくなっている。長引くマイナス金利政策の影響で魅力が薄まっているからだ。貯蓄性保険の世界では「外貨建て」が勢力を増している。いよいよ「相続」にも進出するのか!?

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 相続税が課税されるかどうかの基準となる「基礎控除」が引き下げられてから3年。盛んに開かれた相続関連の各種セミナーも落ち着きを見せている。

 税理士法人ファシオ・コンサルティングの代表税理士、八木橋泰仁氏が不安そうに言う。

「最近の相続相談は、配偶者が死亡した後、相続税を申告する段階になってからの方が多いですね。税金がかかる場合は当然、どうしようもありません。そんな時は、次に遺された配偶者が死亡した場合の『二次相続』までを視野に入れて、最適な方法を探るようにしています」

 なぜ、そうなるのかというと、セミナーに参加してもほとんどの人が「聞きっぱなし」だからだ。

「私の見立てでは、対策まで進むのは1割いるかいないかです。それ以外の人は実質、何もしていません。本当の富裕層には税理士がついているケースが多いが、基礎控除引き下げの影響を受けそうな大企業サラリーマンのOBや夫婦双方が元公務員などの家庭は、どうするつもりなのでしょうか」

 心配な方は、これを機会にわが家の資産の棚卸しをしておいたほうがいい。基礎控除は「3千万円+600万円×法定相続人の数」で求める。夫婦と子供2人の4人家族なら、夫か妻が死亡した場合の基礎控除は「4800万円」(3000+600×3)だ。

 勤め人の家庭の場合、資産は「自宅と預貯金など各種金融商品」の例が多いだろう。不動産や有価証券は時価で評価する。東京で好立地に一戸建てを持っていたりすると、土地だけで基礎控除を超えてしまう場合もある。

 しかし、あわててはいけない。人生100年時代、自分の人生が一番大切だ。これからの夫婦2人の生活にかかる費用を余裕を持って多めに見積もるなど、しっかりとしたマネープランを立ててほしい。それでも残りそうな資産が基礎控除を上回っていれば、相続税を支払う対象になる。

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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