帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
漢方から見た認知症(※写真はイメージ)
漢方から見た認知症(※写真はイメージ)

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。死ぬまでボケない「健脳」養生法を説く。今回のテーマは「漢方から見た認知症」。

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【ポイント】
(1)漢方では認知症の原因を四つあげている
(2)認知機能の低下を脳だけの問題と考えない
(3)四つの原因に対応した生薬、方剤がある

 今回は漢方から見た認知症についてお話ししたいと思います。漢方は中国から伝わった医学を日本で発展させたもので、中国医学そのものではありません。しかし、基本の考え方は変わりません。

 この漢方の世界でも認知症の治療・予防は重要なテーマになっています。西洋医学と違うのは、認知症の原因として次の四つをあげているところです。

(1)血お。血流の停滞とそれに伴う症状、兆候のことで、お痛やうっ血、潰瘍などが生じます。そして、脳の血流障害が起こることから、認知障害があらわれます。

(2)腎虚。腎臓の精が不足した状態です。腎は五臓の一つで、生命活動を維持するための基本物質である精を貯蔵しています。また腎には骨髄や脊髄を生み出す働きがあります。脊髄は脳に通じているので、腎と脳は密接な関係があるのです。ですから、腎虚の状態になり精気が不足すると、脳の機能が低下して、精神疲労や健忘などの認知に関わる症状が生まれます。

(3)脾気虚。全身への気血の供給が不足した状態。脾も五臓の一つで胃と表裏をなして消化機能を担当しています。その脾の機能が低下して消化吸収の働きが弱ると、全身の気血が不足してしまいます。これが認知機能の低下をもたらします。手足に力がなくなり、めまいや全身倦怠といった症状があらわれます。

(4)肝気鬱。気の流れが滞った状態。肝は胃腸の機能を調整して消化を助けたりしています。この調整機能が乱れると、気の流れが滞ってしまいます。気の流れは精神的な伸びやかさにも関わっているので、肝気鬱の状態は認知機能にも影響を与えます。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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