「意識障害がないようだったら、涼しいところへ連れて行き、水分補給をします。ただ、ここで一番やってはいけないのが、第3者がペットボトルなどを口もとにもっていき、水を飲ませることです」(※写真はイメージ)
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 真夏の野外で音楽を楽しむイベント、夏フェス。人がたくさんいる野外イベントで、家族や友人が熱中症かもしれない!という状況になった時……わたしたちはどのように対処すべきなのでしょうか。救命救急医は熱中症患者にやってはいけないことがあると言います。

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 熱中症といえばカンカン照りのとても気温の高い日になるイメージですが、熱中症の暑さ指数(WBGT)で最もおおきな要素を占めるのは「湿度」です。東京都立多摩総合医療センターの救命救急センター長であり、日本救急医学会「熱中症に関する委員会」の委員長を務める清水敬樹医師はこう話します。

「暑さ指数の内訳は、気温が1、輻射(ふくしゃ)熱(道路や壁からの照り返しの熱)が2、湿度が7の比率です。湿度の因子が最も高く、気温18度の冬場のマラソンでも湿度が高いために熱中症で亡くなる方がいるほどです。ですので、曇りだからといって油断してはいけません」

 湿度が高いと汗がかきにくくなります。人間のからだは汗をかくことでしか体温調節ができません。汗をかけないということは熱中症になる危険性が高くなるということです。いくら水分補給をしても、尿で排出されては意味がありません。汗をかくことはそれほど大切なため、汗をかきにくい状況というのはとても不利と言えます。

 曇りの日であっても、湿度が高ければ熱中症になる危険性はじゅうぶんにあるのです。今は、天気予報などでも暑さ指数が出ているので、事前に会場付近の暑さ指数をチェックして注意しておくと対策がとれるかもしれません。

■友人が熱中症になったとき

 夏フェスにいっしょに参加している友人や家族が熱中症になったかもしれない!というとき、どのように対応すべきなのでしょうか。

「友人が、少しぼーっとしているな、動きがおかしいな、などちょっと変だと感じた時、まずは意識がはっきりしているか呼びかけましょう。意識障害があったら、その時点でかならず救急車を呼んでください」(清水医師)

 意識障害があった場合、応急処置をしないと命を落とす危険性もあります。

「意識障害がないようだったら、涼しいところへ連れて行き、水分補給をします。ただ、ここで一番やってはいけないのが、第3者がペットボトルなどを口もとにもっていき、水を飲ませることです。自分の手で水が飲めないというのは意識障害がある証拠です。本人に自分の手でペットボトルなどをもってもらい水を飲んでもらうことが大切であり、これで意識障害があるかどうかを判断できます」(同)

 意識障害の判断は一般人ではとても難しいといいます。目が開いていて言葉をしゃべることができても意識障害があるということがあります。自分で水を飲むことは、意識障害の判断のほかに、飲み物の誤嚥(ごえん)防止にもなります。意識のない人に水を飲ませると誤嚥する危険性があるからです。格闘技などでもKOされた選手にセコンドが水を飲ませることがありますが、実は医療上は絶対にやってはいけないことです。

(文/濱田ももこ)

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