このほか、CKDそのものに対する薬の開発も進んでいる。その一つが、協和発酵キリンが開発中の「バルドキソロンメチル」だ。

「前出のSGLT2阻害薬が腎機能の低下スピードを遅くする薬であるのに対して、こちらは腎機能を回復させる薬。開発が成功すれば世界初、日本発の腎機能改善薬となります」(同)

 バルドキソロンメチルは以前、欧米で最終段階の試験まで進められていた。腎機能の中等度低下が軽度低下に戻るなど大幅な回復が認められたという。しかし心不全の副作用が報告され、試験が中止となった。その後、適応条件などを慎重に選び、日本で開発が再開され、現在に至る。

「糖尿病性腎臓病を対象に、効果と副作用を検討する第2相試験で有効性と安全性が認められました。現在、最終段階の試験が計画中です。試験が成功すれば5年以内に出てくる可能性が高いでしょう」(同)

 このほか、CKDが進行すると起こる合併症、「腎性貧血」の治療薬が国内5社で開発中だ。腎臓は赤血球を増やすエリスロポエチンというホルモンを分泌しているが、CKDが進むとこの分泌が減少するため貧血が起こる。

「腎性貧血が進むと心筋梗塞や脳卒中を発症しやすくなる可能性があります。従来の薬はエリスロポエチンを補充する注射でしたが、開発中の薬は内服薬です。注射薬で効果がとぼしかった患者さんに効く可能性があります。すでに承認申請を準備している会社もあり、2018~19年にかけて複数、薬が出てくる可能性が高いです」(同)

 なお、糖尿病性腎臓病の薬物治療は症状が進行するほど薬の使い方が難しくなる。

「例えば血糖改善薬のビグアナイドは末期腎不全になってきたら使えません。致死率が高い乳酸アシドーシス(乳酸が蓄積し血液が酸性化する)を起こすことがあるからです。また、尿毒症の薬など合併症予防の薬も必要になるので、病状に不安を感じたら主治医に早めに相談し、必要に応じて腎臓専門医や専門医療機関を紹介してもらうといいでしょう」(同)

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