腎性貧血が進むと心筋梗塞や脳卒中を発症しやすくなる可能性がある(※写真はイメージ)
腎性貧血が進むと心筋梗塞や脳卒中を発症しやすくなる可能性がある(※写真はイメージ)

 慢性腎臓病(CKD)から腎不全に進行させないためには、薬物治療が重要になる。糖尿病など原因となる病気の改善とともに腎機能に働く薬が、複数開発中だ。遺伝性の腎臓病に対する薬も登場している。

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 慢性腎不全の原因となる病気の1位は糖尿病だ。東京大学病院腎臓・内分泌内科教授で日本腎臓学会理事の南学正臣医師によれば、近年、血糖改善薬で血糖値や尿たんぱくが下がっても、腎機能の低下が進んでしまう人や、最初からたんぱく尿があまり出ないのにCKDが進行する例が目立ってきたという。

「加齢や高血圧、動脈硬化など糖尿病以外の要因も合わさってCKDになっている人が多いからです。このため、病気や進行を見逃さないための注意喚起として関連学会は昨年、従来の病名である『糖尿病性腎症』に加え、こうした従来の糖尿病性腎症に当てはまらない腎臓病を新たに『糖尿病性腎臓病』と呼ぶことにしました。腎臓専門医以外の医師たちにも病気の理解を深めてもらうよう、啓発に努めています」

 糖尿病性腎臓病に対しては血糖値を下げるだけでなく、腎機能低下を抑える働きのある薬を使うことが大事という。

■腎機能を改善する日本発の薬に期待

「血糖改善薬の中から患者さんに合うものを使いますが、最近では糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬が使われることも多いです。また、高血圧の治療薬であるACE阻害薬とARBには腎機能低下を抑える働きが確認されているため、糖尿病で血圧が高い人にはこちらが処方されます」(南学医師)

 現在、注目されているのはSGLT2阻害薬だ。大規模臨床試験で、糖尿病性腎臓病に対して腎機能低下の進行を遅らせる効果があることが発表されている。

「血糖だけでなく、尿細管のナトリウム吸収を減らすことで、腎臓の糸球体の内圧が低下し、効果を表すのではないかと考えられています。ただし現在は血糖改善薬として使われているため、血糖を下げる効果が乏しくなったら、別の血糖改善薬に切り替えなければなりません。このため、糖尿病性腎臓病の腎保護を目的として長く使えるようにするために、製薬会社が準備を進めています」(同)

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