日本銀行本店。「円」の通貨としての価値を守るのが使命だ。(c)朝日新聞社
日本銀行本店。「円」の通貨としての価値を守るのが使命だ。(c)朝日新聞社
社会保障給付費の推移(週刊朝日 2018年1月5-12日号より)
社会保障給付費の推移(週刊朝日 2018年1月5-12日号より)

「可及的速やかに、消費税率を30%に引き上げる。歳出削減も順次実施、第1弾として公的年金の支給を一時的に3割削減する」

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 政府は、揺らいでいた財政への信頼を回復させるため、ドラスティックな財政再建策を打ち出した。

 金融市場は荒れ続けていた。日米の金利差が拡大して急激な円安が進行し、輸入品の値上がりから物価全体に上昇圧力が強まり、長期金利も上昇し始めた。国の借金である債務残高は1300兆円に達しており、長期金利が上昇すると利払い費の増加が避けられない。このため日本の財政危機が「材料」となり、海外の投機筋を中心に国債が大量に売られた。日本銀行は市場を落ち着かせ、長期金利の上昇を抑えようと、国債を大量に買い支えた……。

 新年号ののっけからお騒がせだが、そう遠くない将来に財政危機が表面化する場合のシナリオを考えてみた。想定したのは「2025年」。シナリオはさらに続く。

 ……日銀の“努力”にもかかわらず財政危機を心配した富裕層らが円に見切りをつけ、資金を海外の不動産市場などに移し始め、物価の上昇スピードがアップ。物価の安定には、日銀が国債を売って市場にあふれた資金を吸収しなければいけないのに、動く気配がない。

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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