ソフトテニス部の部長は、

「備品のボールは消耗品。多めに予算をつけてほしい」

 すると、休憩時間に、ライバルの硬式テニス部の部員が校庭に転がっていたソフトテニスのボールを1ダースもかき集めてきた。

「これで、1ケース分減らせるよね」

 以降、ソフトテニス部は校庭にボールを転がしっぱなしにしなくなった。

 話し合いの場を主催したのは、当時生徒会長だった男性。生徒会の主な仕事のひとつが、生徒会費を部活動や文化祭の費用に振り分けること。約1300万円の予算を各部活に自覚を持って使ってほしいと考え、部長同士の話し合いの場を設けた。その効果はてきめんだった。

「話し合いが成果を生んだ、原体験のひとつです。当時すでに、『将来の夢』として政治家を意識し始めていました」

 男性はよく遊んだロールプレイングゲームを引き合いに出し、こんな説明もする。

「主人公が話しかけると、いつも同じことしか言わないキャラがいますよね。いわゆる『村人A』。意見を持たず、魔王に攻められたら、なすすべなく死ぬ。実社会でも自ら声をあげないと、『村人A』になってしまうかもしれない。主人公でいたいんです。その近道が政治だと考えています」

 いずれは国政に出たいとも思うが、まずは地元市議になり、地域の課題を解決することをめざしている。

 とは言っても、19年の統一地方選には出馬しないつもりだという。なぜか? 大学生の時のインターンシップで、国会議員の落選を目の当たりにしたからだ。

「最低得票率を下回ると、借金を背負う。政治家を『仕事』にして追いつめられると怖いし、政治家の椅子にしがみつく原因になる。だから、落選しても仕事を見つけやすい弁護士をめざしました。まずは生活の基盤を固め、それから立候補するつもりです」

 東海地方の女性は、議員の父の地盤を継ぎ、19年の統一地方選に出るつもり。幼稚園生の娘の子育てを母や姉に手伝ってもらいつつ、毎晩のように各地の会合に顔を出す。家族だんらんの時間はめっきり減った。

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