お手頃価格の品ぞろえのスーパーの甘酒売り場
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こだわりの甘酒が並ぶ有楽町ロフト
こだわりの甘酒が並ぶ有楽町ロフト
甘酒は、タイたおかゆに米麹を入れて混ぜて作る
甘酒は、タイたおかゆに米麹を入れて混ぜて作る

 健康によい食品として、甘酒がブームだ。かつてはお正月やひな祭りの飲み物のイメージが強かったが、今や通年商品。スーパーなどの売り場にはさまざまな新商品が並ぶ。手づくり甘酒に必要な米麹は、品薄の店舗もあるほどだ。

 ところで、これらの人気商品は「ノンアルコール」と表示されている。アルコールが含まれないのに、なぜ甘「酒」なのか、発酵食文化研究家の是友麻希さんに、尋ねてみた。

「そもそも中国から渡った『酒』の漢字の起源は2種あります。一般の人が飲むのが酒、神様に捧げるアルコール度の低いものが『斉』。このふたつがのちに統一され、酒の文字だけが残りました」

 麹を使ったノンアルコールの飲み物は「斉」に属すが、文字伝来の背景に謎が隠されていたわけだ。

「日本書紀にも、(精度の低い)麹でつくった酒の記録があります。甘酒が日本で大流行したのは江戸時代で、滋養強壮食として好まれました。武家の文献にも、『悪酔い防止に甘酒を飲め』との記述があります」(是友さん)

 時を経て、日本の伝統食品が甘酒の名を継いだまま「現代人の体をよくする」食品として見直されているようだ。

 では、麹を使う甘酒が、なぜ体にいいのか。東京農業大応用生物科学部醸造科学科の柏木豊教授に尋ねた。

「米麹は蒸したお米に麹菌を繁殖させた発酵食です。お米の中のデンプンが、麹菌によって生み出される酵素(アミラーゼ)の力で分解されてブドウ糖になる。ブドウ糖を体に取り込めば即、エネルギー源になるというわけです」

 飲む点滴といわれるのはこのためで、疲労回復や夏バテなどの解消にもよい。

「デンプンの分解でブドウ糖とならずに残った部分がオリゴ糖です。これが水分を抱き込む働きを持つため、肌を保湿したり、米の細胞壁の食物繊維が腸内を奇麗にしたり。便秘解消にもつながります」

 柏木教授は長年、米麹をおかゆと混ぜて自宅でつくった甘酒を飲んでいるという。温度管理さえできれば、発酵したての甘酒をだれでも簡単に飲める。

「市販の乾燥米麹で手づくりすると、酵素の活性が強いので、デンプンがよく分解されて甘みが増す。でも酵素は熱に弱い。70度を超えると、活性がなくなるのでご注意を」

 柏木教授から伝授された甘酒のつくり方は次のとおり。

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