「流行語は、時代・世相につけたあだ名である」──。生前、数々の流行語を生みだし、世間に“流行語づくりの天才”と言わしめた評論家の大宅壮一はこう言った。流行語の変遷を辿れば、時代や世相が見えてくる。「週刊朝日」の創刊時から95年間の流行語を総ざらいしてみた。
バブル時代には、CMから生まれた流行語も多い。1980年代の“企業戦士”を象徴した言葉が、89年の流行語「24時間戦えますか」。三共(現・第一三共)のドリンク剤「リゲイン」のテレビCMのキャッチコピーで、CMソングは累計60万枚以上を売り上げた。やればやるほど成果が上がった時代の、24時間休みなく働くモーレツぶりを表したような言葉。今でいう“ブラック”な働き方にも思えるが、同社によると「24時間戦う=24時間働く」という意味ではないという。
「コンセプトは、一歩先を行くビジネスマン。だからこそ、“オンとオフを使い分けて戦おう”というメッセージを込めています」(第一三共ヘルスケア)
90~91年には、ドリンク剤市場全体の中で3分の1近い驚異的な売り上げを記録。同CMシリーズは89年からの3年弱で20本以上もの数を量産した。だが91年の湾岸戦争を機に「戦えますか」シリーズはお蔵入りに。以降、「たまった疲れに。」(99年)など、時代に合わせ、コピーもシフトしていった。
流行語の中には、本誌発のものもある。代表例が58年の「団地族」だ。
「ダンチ族?(中略)このごろふえたアパート群のことを団地といいますが、あのアパート居住者をダンチ族というわけです」
58年7月20日号の「新しき庶民“ダンチ族”」という記事から生まれたこの言葉。団地と言えば当時は憧れの的で、この言葉は雑誌の発売以降、またたく間に広がった。