自分で考え、自ら積極的に動く姿勢も大切だ。自分がやりたいと思ったことや人から依頼されたことは、とりあえずやってみる。そこから新しい世界が開け、仕事も広がっていくだろう。

 そして、定年前からできる準備として、ぜひ力を入れたいのが、地域社会とのつながりを深めることだ。

「特に男性は、自分が住む地域の事情に疎い人が大半なので、自治会や町内会の行事に顔を出したり、マンション管理組合の運営に参加したりするなど、地域の人々との交流から始めてみましょう」(同)

 「介護タクシー」や「自宅で民泊」など、定年後の新しい働き方の実例がある。地域に根づいた活動がビジネスにつながっていくケースも多い。

「地域社会では今、高齢者の増加、学校でのいじめ、待機児童の問題、地場産業の後継者不足など、行政だけでは解決が難しい問題が山積しています。こうした問題に対して、地域住民が主体となってビジネスの手法で課題の解決や地域活性化を目指す『コミュニティービジネス』の動きが、各地で盛んになりつつあります」(同)

 ビジネス経験があり、元気で労働意欲もあるリタイア世代は、コミュニティービジネスの担い手として期待されているという。

 コミュニティービジネスのなかには、ボランティア活動や趣味のサークル活動から発展した事例も少なくない。起業で稼ぐ場合も、自分の生活の場である地域社会に根づいて活動していくことが不可欠だ。

「自治体によっては、リタイア世代の地域参加を促すために、『地域デビュー講座』や『シニア起業講座』を開催しているところもあります。地域活動の情報は、自治体の広報誌やホームページに掲載されているので、こまめにチェックしましょう」(同)

 80歳まで生きると仮定すると、定年後の自由時間は約10万時間。これは、20歳から60歳までの生涯労働時間に匹敵する。この長い自由時間を有意義に過ごすため、定年後は現役時代の雇われる立場の働き方を卒業し、生きがいや社会貢献、自分がやりたいことを追求する働き方に挑戦してみるのもいいだろう。(週刊朝日MOOK『定年後のお金と暮らし』より)

週刊朝日 2016年12月23日号