プロゴルファーの丸山茂樹氏は、石川遼選手の国内メジャー初優勝について語る。

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 国内男子ツアー最終戦「日本シリーズJT杯」(12月3~6日、東京よみうりCC)は、石川遼(24)の圧勝でした。

 2位に3打差の単独首位で最終日を迎えられたのが大きな余裕につながったと思いますけど、全体的なバランスがよくて、隙を与える感じがなかった。寒くて風も強く、おまけにグリーンも速いという状況下でも、遼の安定感は抜群だった。

 何が大きいって、スイングが17、18歳のときの感じに戻ってきましたからね。これならアメリカでも十分にやっていける気がします。2、3年前に新たに取り組んでたスイングを見たときは「このままではアメリカでは厳しいし、日本に戻ってもキツいだろうな」と見てたんです。

 そのころ遼が取り組んでたのは「レイドオフ」というスイングへの改造です。始動のときに脇が開いて、ダウンスイングでさらに開いて、インパクトでトウダウンになってた。

 それがいまは、始動のときに脇がしまってきてます。バックスイングで両手が腰の位置まできたときに、クラブが少し立ち気味になる。そうするとバックスイングを上げたときに少しクロスする。シャフトの位置が頭寄りに来てね。そのクロスのタイミングを合わせて打ってたのが、戻ってきてます。

 この試合でのゴルフを米PGAツアーでもやれれば、勝てます。でも、やっぱりそこには大きな壁があるってのは遼自身が感じてることなので、人がとやかく言うことじゃないですし、その壁は自分で打破していかないと。どんな手を使ってでも壁をぶちこわすか乗り越えていかないと、次がない。そこはまた、新たな戦いがあるのかなという気はしますね。

 
 どうやって壁の向こうへいくのかについては、日常の会話の中で聞いた言葉であったりとか、他の競技のアスリートから聞いたこととか、ほんとにいろんな気づきがあると思います。地道に努力を重ねていれば、必ずそういう気づきの瞬間がやってきます。まあロールプレイングゲームみたいなもんですよ(笑)。誰かが何かを言ってくれて、「この人に話を聞いてよかった」とか「この人と会えてよかった」とか感じる日が来ますから。

 この試合のテレビ解説をさせてもらいましたけど、最終日の視聴率は10.1%(関東地区)で、今シーズンの男子ツアーで最高でした。よみうりCCには最終日、1万人を超えるギャラリーが駆けつけました。石川遼というブランド力は大きいですね。なんだかんだ言って、遼が優勝するところを見たいと。これは松山英樹(23)でも一緒だと思いますけど、それだけ人を魅了するものがあるということですよね。

 さてタイガー・ウッズ(39)です。今年3度も腰のヘルニア手術を受け、先日の自身の開催試合にも出られず。「トンネルの向こうに光が見えない」と発言して、引退かという騒ぎになりました。時間が経てば経つほど、いろんな不安は間違いなく襲ってきますからね。仕方ない。

 本人はおそらくもう、全盛期のようなパフォーマンスは求めてないはずです。それに近づける状態まで、どう持っていくか。最後の勝負ですね。

週刊朝日  2015年12月25日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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