天才にしかわからない感覚のズレ。ただ今後スタメンでの起用が増えれば、感覚を取り戻し、打率も2割8分ぐらいまで戻すことは可能だと河村氏は言う。

 ファンにとっては胸をなで下ろす材料だが、一方で気になるのは来季の動向だ。イチローは目標とする大記録の今季達成が難しくなっている。メジャー通算3千安打まで残り112本、日米通算ではピート・ローズ氏が持つ世界記録4256安打まで90安打(ともに10日現在)。

 日本の古巣オリックスが来季、選手兼任監督をイチローに要請するとの報道も流れているが、イチローは日米どちらを選択するのか。

 大リーグに詳しいスポーツジャーナリストの豊浦彰太郎氏は「来季も大リーグ」と予想する。

「今季の入団会見でイチロー選手は『数字は大切なもの。これがなくては現役を続けていくことはできない』と話しています。今季後半の活躍次第では、来季二つの記録達成は十分狙える。今オフは、より出場機会の多い球団を選ぶのではないか。球団側もイチローは興行的に価値が高い。日本企業からの広告も見込めるし、グッズも売れる。相思相愛でまとまっていくでしょう。

 日本復帰があるとすれば、記録を達成した後の2017年シーズンだと思います」

 今季は黒田博樹投手が広島カープに復帰し、大きな称賛を浴びた。ファンは天才打者にも再来を期待するが、その胸中はいかに。

(本誌・牧野めぐみ、一原知之、上田耕司、小泉耕平、長倉克枝/今西憲之)

週刊朝日 2015年7月24日号