安倍晋三首相のブレーキ役となれるのか。

 自民党の若手議員27人が7日、「過去を学び『分厚い保守政治』を目指す若手議員の会」を発足させた。昨年から猛スピードでタカ派路線を進む安倍政権に、「穏健な保守こそ、自民党の進むべき道」と訴えることも考えている。

 会の代表は当選2回の衆院議員3人。自民党ハト派の「宏池会(こうちかい)」(岸田派)の武井俊輔氏(40)と国場幸之助氏(42)、無派閥の石崎徹氏(31)。中国外交を重視し安倍首相に批判的な福田康夫元首相の長男、達夫氏(48)も会に参加している。

 7日の初会合で武井氏は「今年は戦後70年の重要な節目。幅広い保守の一翼を担うための学びを深めていく」と意義を強調した。会のメンバーの一人は言う。

「安倍さんが進める安全保障政策に危うさを感じている自民党議員は少なくない。これまで公明党にブレーキ役を押し付けてきたが、自民党にも多様な意見があることを知ってもらいたい」

 25日には作家の浅田次郎氏を講師に招く。浅田氏は、安倍政権の集団的自衛権の行使容認の動きについて「憲法9条が空洞化してしまう」「首相の政治手法は非常識」といった批判をしてきただけに、反安倍の機運が高まりそうだ。

 
 今回の一連の動きはある人物がウラで指示している、と永田町では囁かれている。元自民党幹事長で宏池会の名誉会長、古賀誠氏(74)だ。

 古賀氏も集団的自衛権の行使容認を進める安倍首相について、「自分が最高責任者だから自分で決めるというのは、愚かな坊ちゃん総理だ」と批判。3月末のテレビ番組では「自民党の先生方、なぜ黙っているんだ」と奮起を促している。

 武井氏は古賀氏の“関与”を否定するが、宏池会の中堅議員は「古賀さんの指示を受けての行動でしょう」と推測する。

「武井、国場は国会議員になる前から、古賀さんに大変世話になっている。宏池会の会長だった大平正芳元首相の墓参りも一緒に行くほどです。大型連休のニュースの少ない絶妙なタイミングで会を発足させたことをみても、古賀さんの指示があったのではないか」

 7日に発足した勉強会だが、入会者は増え、すでに30人を超えた。当初は会の発足を容認した官邸も、警戒を強めているという。

 政治評論家の浅川博忠氏は「官邸側の切り崩し工作が始まる」と指摘する。

「首相にしてみれば、安保関連法案の国会審議が始まるというのに、身内が足を引っ張るなという心境でしょう。今後、あらゆる“脅し”をかけて会を弱体化させるのではないか。一方、古賀氏もそうはさせじと対抗するはずです」

 ようやく声を上げたハト。意地を見せられるか。

(本誌取材班=一原知之、小泉耕平、牧野めぐみ、山岡三恵/今西憲之、黒田 朔)

週刊朝日 2015年5月29日号