「マッサン」復活の鍵はラスボス“ピン子”? 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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「マッサン」復活の鍵はラスボス“ピン子”?

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週刊朝日#ドラマ

 ドラマ評論家の成馬零一氏は、視聴率20%を割ってしまったものの「マッサン」から目が離せない理由をこう語る。

*  *  *
 連続テレビ小説『マッサン』(NHK)の放映開始から早3カ月。本作はニッカウヰスキーの創業者・竹鶴政孝とスコットランド人の妻・リタの生涯をモデルとしたもの。少し物語を振り返ってみよう。

 大正9年、ウイスキー製造技術を学ぶためスコットランドに留学していたマッサンこと亀山政春(玉山鉄二)と、妻・エリー(シャーロット・ケイト・フォックス)は日本に帰国。マッサンは初の国産ウイスキーを造るために大阪の住吉酒造でウイスキー製造部門を立ち上げようとするが、株主総会で否決されて、住吉酒造を退社する。

 エリーは日本での生活に少しずつ慣れ、近所の人々から受け入れられるが、マッサンの母親の早苗(泉ピン子)から外国人という理由で拒絶されて、妻として認めてもらえない。序盤の見どころは、そんな泉ピン子演じる早苗の圧倒的な存在感だ。

『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)などの橋田寿賀子ドラマで看板を張ってきた泉ピン子は日本のテレビドラマを、もっと言うと、日本を象徴する女優だと言える。彼女が外国人ヒロインのエリーを拒絶する姿には凄まじい迫力があり、第1話からラスボス(ゲーム用語で作中最強の存在の意)登場! と注目された。

 その後、失業したマッサンが、家賃を払えずニート状態に。作り手の意図としては、序盤でマッサンの情けない部分を描くことで人間味を与えようとしたのだろう。だが毎日見せられると、だんだん「いい加減にしろ!」という気持ちになっていく。

 ちょうどその頃に視聴率は低下。第8週の平均視聴率は19.3%(関東地区)となり『あまちゃん』以来続いていた朝ドラの20%超え(同)の記録はストップした。19%という数字も決して低くはないが、そんなことが話題になること自体、朝ドラが注目されている証しなのだろう。

 紆余曲折を経て、マッサンは鴨居欣次郎(堤真一)の鴨居商店に入社し、初の国産ウイスキー工場の立ち上げに着手。そしてエリーはマッサンの子を妊娠するが、自宅の階段で転落して流産してしまう。診断の結果、極度の貧血で子供が産めないことを気に病みマッサンと別れようとするエリーだが、マッサンから、「エリーが側におったら、わしゃ何もいらん。側におって、いっしょに夢を追えたら、わしゃ何もいらん」と言われ、養子をもらう決意をする。

 脚本を担当する羽原大介の作風は、こんな“男くささ”と日本的な土着性に溢れている。その一方で、在日韓国・朝鮮人と日本人の交流を描いた『パッチギ!』を筆頭に、異民族・異文化の衝突を描いてきた。今回はその融合というか、朝ドラ初の外国人ヒロインとなるエリーの見せ方で面白いのが、多様な言語表現だ。

 頻繁に流れるスコットランド民謡「オールド・ラング・サイン」は時に日本語歌詞の「蛍の光」で歌われ、一つの歌を2カ国の言葉で歌わせることに複数の意味を持たせている。

 エリーは少しずつ関西なまりの日本語を覚えていくのだが、マッサンとケンカして感情を露(あらわ)にすると、台詞が英語になる。その瞬間、普段は明るいエリーの、異国で暮らす孤独が伝わってくるのだ。

 他にも吹き替え、字幕など様々な手法を持ち込むことで、“言葉の壁”という難しい課題に挑んでいる。

 物語はまだまだ前半の折り返し地点。夫婦の熱いLOVEの行方と、泉ピン子の怪演に注目したい。

週刊朝日 2015年1月16日号


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