健さん以上の不器用学生 “本家”の気遣い今も感謝 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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健さん以上の不器用学生 “本家”の気遣い今も感謝

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 高倉健さんをしみじみ思う師走、「幸福の黄色いハンカチ」「鉄道員(ぽっぽや)」など、多くのロケ地となった北海道では、撮影の思い出を懐かしむ人が多い。札幌市の会社員Kさん(55)もその一人。健さんが北海道警の刑事に扮した「駅 STATION」(1981年)のロケは「風待食堂」がある増毛町が有名だが、真冬の札幌市内でも行われた。

 Kさんは当時、大学の野球部に所属。部員約30人と一緒に「駅 STATION」のエキストラのバイトをした。強盗が立てこもるシーンで、部員たちは機動隊員となり、ジュラルミンの盾を持って並んだ。端に立つKさんと、隣の4番バッターの体格ががっちりしていた。

「君たち、こっち来て」

 2人だけ狙撃隊員役に“抜擢”され、さらにKさんだけが、高級国産車の後部に座らせられた。

「まもなく急発進する。そして急停車したら、ドアを開けて飛び出して」

 さらに後部座席にもう一人乗ってきて、それが高倉健さんだったのである。

 高まる緊張のなか、車が発進、急停車した。Kさんは素早くドアを開けようとしたが、自動ロックされていたことがわからず、ガチャガチャやってNGとなる。

 2回目も、ドアを開けて飛び出したところ、アイスバーンで転んだ。3回目も飛び出したが、凍った路面によろけてNGである。

 頭が真っ白となったKさんに、そのとき、健さんが近づいてきた。少しだけ笑いかけ、ずれたKさんの帽子を直し、ひと言いった。

「緊張しなくて、いいんだよ」

 おかげで4回目は見事に成功した。あれから30年余、ときどき酔うと、

「緊張しなくて……」

 と、健さんモドキになるKさんである。

週刊朝日  2014年12月12日号


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