元西武ライオンズのエースで同チームの監督も務めた東尾修氏は、今シーズン下位で終わった西武についてすべてを変える意識が必要とこういう。

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 西武ライオンズが5位に沈んだ。首位ソフトバンクとは16ゲーム差。開幕から低迷して浮上することもなかった。私自身も、監督を務めた身として、相当な危機感を抱いている。抜本的な立て直しをしなかったら上昇はできないとの思いが、胸に強くある。

 すべてを変える意識がないと、負の連鎖を解くことはできない。まずはフロント。ここ数年のドラフト上位の投手で活躍した選手はどれだけいるかな。スカウティングの部分で間違っていると言わざるを得ない。外国人選手だってそうだ。人数をそろえ、数打てば当たるでは、キャンプからチームを作って開幕ダッシュという計算すら立たない。

 今年の伊原監督の失敗の責任を、球団フロントは責任として重く受け止めているのか。渡辺久信シニアディレクターは、現場に足りないところをいちばんよく知っている。渡辺SDを中心に一枚岩となり、短期と中長期的な部分をしっかりと考えた組織を早急に作っていくべきだ。

 来季の監督決定に至る過程も見えなかった。球団は田辺徳雄監督代行に対して、「勝率がもう少し良かったら考えないといけないけど、今の状態だとちょっと」と話したのではないかな。そして近年のテーマである投手陣の立て直しのため、投手出身監督が理想とメディアには話していた。それが、10月2日に発表されたのは野手出身の田辺代行の監督就任。外に向けての発信はただのカムフラージュにすぎなかったのか。田辺監督が悪いわけではないが、明確なビジョンの下に決定したとは到底言えないね。

 今の西武の戦いを見ると、技術的にも精神的にも一本の筋というか、芯がないよ。自主性に任せることと自由は違う。勝負の厳しさと向き合う上で、グラウンドの中に自由はほとんどない。規律やチームの決め事を理解し、その中でどう自分を生かすかを常に考えることが必要だ。今度入閣するコーチには、厳しさとともに、選手を納得させる指導力が問われる。調和型の指導では、瞬間的には空気が良くなっても、徐々になれ合いになっていく。力強さやたくましさを身につけていかないと駄目だ。

 選手も意識のレベルがはっきり言って低い。2軍の選手はイースタン・リーグで活躍することで満足していないか。1軍で出るためにプロ野球選手になったのだろ。競争の中からしか、爆発的なエネルギーは生まれてこない。主力も同じだ。投手でいえばエースの岸は、黙々と自分の仕事をするタイプだ。もっとグラウンド内外でリーダーになる選手が出てこないと。「全員野球」というのは、リーダーがいて、脇を固める選手がいて、一芸に秀でた控えがいて、そこに若手が取って代わろうと目をぎらつかせることで生まれる。全員が自分の生きる場所を見つけて、勝利の一点に集中する。そういうチームが「全員野球」を展開できる。今の西武は、その一体感が生み出す力を感じられない。

 クライマックスシリーズに出る上位3チームよりも、早く来季に向けたスタートを切れる。その時間をどう有効活用するか。ああでもない、こうでもないと思案している時間がもったいない。早くから補強、ドラフト戦略を練り上げ、現場を含めた、チームの方向性を打ち出すことだ。強い西武ライオンズが過去のものとなっては、悲しすぎるよ。

週刊朝日  2014年10月24日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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