救急車で運ばれているのに搬送先が決まらず「たらい回し」に――そんな医療の難問に、一つの解決方法を示すことができそうな“切り札”が登場した。ITを活用したシステムだ。

 改革に乗り出したのは佐賀県職員、円城寺雄介さん。予算不足などのさまざまな障害を乗り越え、2011年に誕生したのが「99さがネット」なるシステムだ。県内の全救急病院の情報が画面にほぼリアルタイムで映し出される。

 扱うデータは大きく分けて次の2点だ。

 一つは、どの病院に、どんな専門医がいるか。示される項目は脳外科や整形外科など20。これは、病院が受け入れを拒む大きな理由の一つに「専門外」があることを受け、設けられた。最適な専門医をすばやく見つけたい救急隊員にとって、例えば脳外科と整形外科の両専門医がいる施設が一覧できるシステムは有効だ。

 もう一つは、どの病院が、どのくらいの数の患者を受け入れ、あるいは断っているか。断られた理由を救急隊が書き込むようにした。これは、それまで全く知られていなかった情報だ。

 佐賀県では導入わずか半年後に、平均搬送時間が1分間短縮された。過去長い間、延び続けてきただけに、画期的な改善だった。その効果を知った自治体から問い合わせが相次ぎ、すでに大阪・群馬・栃木など7府県で導入。来年には神奈川・福島・三重・高知の4県でスタートする予定で、さらに東京など20以上の自治体が導入を検討するなど、全国を席巻する勢いだ。

週刊朝日  2014年6月20日号より抜粋