用意した紙を読み上げ、発言撤回を表明する麻生太郎副総理=1日午前10時49分、東京・霞が関の財務省、白井伸洋撮影 (c)朝日新聞社 @@写禁
用意した紙を読み上げ、発言撤回を表明する麻生太郎副総理=1日午前10時49分、東京・霞が関の財務省、白井伸洋撮影 (c)朝日新聞社 @@写禁

 憲法改正に絡み、「ナチス政権の手口に学んだらどうか」と発言した麻生太郎副総理兼財務相(72)。海外や野党から猛バッシングを受け、撤回したが、政権ナンバー2の相変わらずの失言癖に、党内には「要職に起用し続けて、大丈夫なのか」との声が広がっている。

 今回の麻生氏の失言に特にカンカンだったのは、安倍首相側近の菅義偉官房長官(64)だ。発言の深刻さを理解していなかった麻生氏に対し、電話で「大きな誤解を招いている。撤回も含め検討してほしい」と、きつい口調で迫ったという。

「昨年末の安倍政権発足後から、菅さんは閣議で初入閣の大臣に対し、『発言には十分気をつけるように』と注意していました。しかし、そんな場でも麻生さんは『俺を注意しなくていいのか。一番危ないぞ』などと、軽口をたたいていたようです。だから余計に菅さんは腹が立った。せっかく参院選で大勝し、ねじれを解消したのに、総理経験者に足を引っ張られた格好です」(自民党ベテラン議員)

 立場や役職が変わっても、性格は簡単には変わらない……。麻生氏はこれまでも失言を繰り返してきた。

 衆院議員時代の1983年には「女性に参政権を与えたのは失敗だった」。

 首相時代の2008年には、「多額の収入がありながら(定額給付金の)『1万2千円をちょうだい』と言う方はさもしい」「医者は社会的常識が、かなり欠落している人が多い」と問題発言を連発した。

 副総理就任後の今年1月、終末期医療に関し「さっさと死ねるようにしてもらわないと」と言い放った。

 だが、“舌禍事件”はこれだけではない。自民党関係者を取材したところ、出るわ出るわ……。

「2年前のある講演では『日本ほど安全で治安の良い国はない。ブサイクな人でも美人でも、夜中に平気で歩けるのだから』と。完全に女性蔑視の発言ではないかと心配になりました」(自民党中堅議員)

 別の議員もこう証言する。「自民党副総裁の高村正彦氏の仕事ぶりを『弁護士あがりの議員は口先だけの人が多いけど、高村副総裁だけは違う』と評価してました。だが、安倍内閣の3閣僚や公明党トップも弁護士出身。『私たちは口先だけか?』と誤解されかねない」。

 4月の名古屋市長選で、応援した前自民党市議が河村たかし氏に敗れた直後、悔し紛れか、こう言い放った。「名古屋人というのは民度が低い。あんな市長(河村氏)を選んじゃうのだから」。

 6月の東京都議選では、千代田区内で行った応援演説でも思わず、本音が……。「八王子や西多摩って、まだ東京都なんだなあ。奥多摩なんてえらい人が少ない。私の住んでいる筑豊のほうが、まだ人がいる」。

 まさに、枚挙にいとまがない。今回のナチス発言と共に、こうした問題発言も徐々に党内に広まり、「麻生氏の首相再登板」の可能性は遠のくばかりだ。「今回は国際問題にも発展しかねない失言で、かばう議員もほとんどいない」(自民党幹部)という。

 最近の麻生氏は失敗続きだ。7月30日の参院議員会長選では、町村・岸田・額賀の3派連合が担いだ溝手顕正氏(70)に、自分の派閥の鴻池祥肇氏(72)をぶつけたが、惨敗した。

「頼みの大島派との合併も、昨春からなかなか進んでいません。安倍総裁誕生の立役者だった麻生氏ですが、今回の失言を機に、閣外へ追放される可能性も出てきました」(政治評論家・浅川博忠氏)

 自業自得か……。

週刊朝日 2013年8月16・23日号