消化性潰瘍は、自身の粘膜を胃酸などで「消化」してしまうことで発生する。おもに胃と十二指腸にできるものを指す。効果の高い薬で多くは治癒できるようになった。しかし一方で、薬剤性の消化性潰瘍が増加してきている。

「十二指腸潰瘍は胃酸が多い人にみられます。空腹時にしくしく痛むのが特徴です。若い人が多いですね。十二指腸潰瘍の約9割はピロリ菌感染があり、胃は慢性胃炎となっています」と話すのは、四谷メディカルキューブ外来部長・消化器内科部長の伊藤慎芳(まさよし)医師だ。一方、胃潰瘍はより年齢層が高い中高年で、胃粘膜の萎縮(いしゅく)した人に多くみられるという。病状は十二指腸潰瘍に似ているが、食後の痛みや胃もたれがあらわれることもある。

 消化性潰瘍には効果の高いPPI(プロトンポンプ阻害薬)という薬がある。胃酸を分泌する壁細胞のプロトンポンプに働き、分泌を抑制する。胃潰瘍では8週間、十二指腸潰瘍では6週間服用すると、約9割は治癒する。鎮痛効果も強いので、痛みの症状も数日で軽快する。

 最近、薬剤性の消化性潰瘍が増えてきている。脳梗塞や心疾患で使うアスピリンなどの抗血小板薬や、関節リウマチや疼痛(とうつう)治療で使う消炎・鎮痛剤のNSAIDs(エヌセイズ=非ステロイド系抗炎症剤)が原因になる。これらの薬には、胃粘膜の防御作用を低下させるという副作用があるため、胃粘膜の荒れや潰瘍をつくりやすくなる。薬剤性の潰瘍はおもに胃にできやすく、胃潰瘍の約3割を占めるといわれている。

「薬剤性の潰瘍が疑われたら、潰瘍治療中は薬の減量や中止をしてもらいます。しかし元の病気の状態が悪化するといけませんから、慎重に対処します。潰瘍をきちんと治療すれば再発率は低く抑えられます。また、潰瘍が治ったあとでもPPIを使って、再発予防としての維持療法をすることもあります」(同)

週刊朝日 2013年2月1日号