ロンドン五輪で盛り上がった今年の夏。暑かったのは五輪だけではない。千葉県浦安市には神輿(みこし)が大暴れする、熱い祭りがある。

「マエダ! マエダ!」

 6月16、17日、浦安三社祭の独特の掛け声が、浦安市旧市街の元町地区に響いた。祭りは市内の三つの神社による合同の祭礼で、町には神輿や山車(だし)が100基以上練り歩いた。

 今でこそ「東京ディズニーランドのある街」として全国的に知られる浦安市だが、1960年頃までは江戸川の最下流に位置する小さな漁師町だった。浦安の祭りは漁師の荒い気質そのままの"暴れ神輿"として知られ、過去には寄付金の少ない家や交番に神輿が乗り込んだこともあったという。「マエダ!」という掛け声も、統制がとれなくなった神輿を進ませるために「前だ!」と指揮したことが起源だと言われている。

 取材中にも、一部の若い担ぎ手たちが神輿を左右に引っ張って、前進できない場面に何度も遭遇した。そのたびに観衆から歓声が上がり、手拍子とともに「マエダ!」と大きな掛け声がかかる。神輿が暴れれば暴れるほど、担ぎ手も観衆も喜ぶ。それこそがこの祭りの醍醐味なのだ。

※週刊朝日 2012年9月21日号