8月12日、ロンドン五輪が閉会した。1964年の東京五輪以来、ずっと現地で応援を続けてきたオリンピックおじさんこと山田直稔氏は、今回の大会を最後と決めていたが、その気持ちは揺らいでいるようだ。

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「4年後もリオデジャネイロで会いましょう」

 なんて声を、各国の人たちからかけられた。いまの私は元気いっぱいだけど、4年後は90歳なんだよ。何が起こるかわからないよ。しかも日本から行くには一番遠いブラジルだよ。

 でもね、本音では車いす生活になっていても、4年後にリオに行きたい気持ちはある。そこで死ねたら本望なんだ。でも女房を始め、周りは心配するしね。ゆっくり考えることにするよ。

 後継者なんて出てくるはずがないんだよ。一大会で1千万円かかったこともあるんだからね。こんな物好きは、未来永劫出てこないと思うね。

 でもね、つくづく応援っていいもんだと思うよ。必死でもりたてて、思い通りになったときの喜びは、もしかしたら選手本人以上じゃないかな。キザかもしれないけど、地球上に生きる喜びを感じられるんだね。

 あなたが誰かに「バカヤロー」と怒鳴れば、巡り巡って「バカヤロー」が自分に返ってくる。「ありがとう」と感謝の心を示せば、後に「ありがとう」と感謝される。みなさん、どうかお忘れなく。

※週刊朝日 2012年8月31日号