金7、銀14、銅17。日本はロンドン五輪で過去最多の38個のメダルを獲得した。女子バレーは眞鍋政義監督のもと、銅メダルに。その要因を、多くの日本のメディアはiPadなどを駆使した「IDバレー」と伝えているが、本当だろうか。
2010年の世界選手権準決勝で、眞鍋監督は突如、1週間前に足を捻挫(ねんざ)し、ベンチ入りもままならなかった石田瑞穂を起用した。ブラジルには彼女のサーブが有効というデータがあったためだ。眞鍋監督は続く3位決定戦も石田をコートに送り、日本は32年ぶりに世界選手権のメダルを獲得した。監督は試合をこう振り返った。
「けがを乗り越えてやっと出番が来た石田の存在は、『絶対にメダルをとろう』という選手の気持ちを盛り上げてくれた」
データ以上にメンタル面でチームにプラスになる、と考えたのだ。
同じことが今回の3位決定戦にも言えるだろう。迫田さおりは韓国戦でのスパイク決定率が高い。だが、迫田のスタメン起用はそれだけが理由ではないはずだ。
眞鍋監督は選手交代をしながら、チームを勝利に導く「ラッキーガール」を常に探していて、その条件を、
「まじめにこつこつと頑張る選手の人間性が、他の選手に『彼女がいるから私も頑張ろう』と思わせる人」
と、語ったことがある。 今回の迫田起用は「女性選手はメンタルが大事」が持論である眞鍋監督ならではだった。
※週刊朝日 2012年8月31日号