いよいよ開催が間近に迫ったロンドンオリンピック。毎回、羽織袴に派手な格好で選手たちを応援するオリンピックおじさんこと山田直稔さんは、実は偶然に銀座のクラブでなでしこジャパンの佐々木則夫監督と出会ったという。当時のことをこう振り返る。

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 北京でひどい目にあって、2度目の「引退宣言」をした私。なぜロンドンへも行くことにしたかというと、なでしこを応援したいと思ったからなんだ。

 昨夏のワールドカップ優勝が強烈に印象に残った。個々の能力で上を行く相手に、次々と勝っていったでしょ。久々にスポーツで心を打たれたね。それでロンドンへ気持ちが傾いた。

 そうするうちに9月になって、なでしこの佐々木則夫監督と出会ったんだ。

 場所は銀座8丁目のクラブ。私が仲間と飲んでたら、奥様を連れて来られてね。せっかくだからと一緒に飲んだ。読者のみなさんもご存じの通り、監督はユーモアの人だからね。楽しい酒席になりましたよ。

 翌日、ふと思ったの。監督はただ、酒を飲みに来てたんじゃないな、と。選手と近い年代のホステスさんと話しながら、女心というものを学んでたんだね。

「世界一になったのも偶然じゃない。よし、ロンドンで佐々木さん率いるなでしこを応援しよう」

 と決意したんだ。なでしこ応援用のシルクハットも新調したよ。上から青、白、赤と、英国旗の色を帯状に入れたの。前には小さなサッカーボールを3個くっつけてね。佐々木さん、金メダルを頼みますよ!

※週刊朝日 2012年8月3日号