がんが見つかったにもかかわらず、検査しても発症元の部位(原発巣)がわからない原発不明がん。統計によると、国内で発症する全がんのうち、年間に3縲鰀5%がこのがんに該当するという。俳優のいかりや長介さんや、元シャインズで実業家の杉村太郎さんなどが、このがんのために亡くなっている。
現在のところ、原因ははっきりとはわかっていない。考えられているのは、元のがんに栄養を送っている血管が何らかの要因で作用しない、元のがんが周りの組織とのかかわりあいのなかで大きくならずに微小のまま消えてしまう、などである。原発巣の有無を確かめる死後解剖で原因が見つかるのは2縲鰀3割だという。
何がんかわからないと、患者はもちろん診察にあたった医師も不安になることが多い。医師は何とか原発巣を見つけようと検査を長引かせてしまい、患者は医師に不信感を抱き、医師の変更を繰り返す場合もあり、「がん難民」を生む要因にもなっている。
しかし、国立がん研究センター中央病院の安藤正志医師は「原因がわからないがんが確かにあるということを受け入れて、医師ときちんと対話しながら治療に臨んでいただきたいです」と強調する。
日本臨床腫瘍学会による診療ガイドラインも制定され、新たな治療法や薬剤の開発もすすめられている。現在、治療後の経過が悪いタイプの症例を個別治療するため、遺伝子を分析し、原発巣を予測する新たな治療法の臨床試験が実施されている。
※週刊朝日 2012年7月6日号