あと40日余りでロンドン五輪が開幕する。1964年の東京五輪以来、12大会すべての応援に駆けつけているオリンピックおじさんこと山田直稔さんが、ソウル五輪を振り返りながら、レスリングの応援ポイントを伝授する。

*  *  *

 レスリングの応援にはコツがあるんだ。日本の選手がポイントを奪われた時に「頑張れ、頑張れ」ってやりがちだけど、ダメなんだよっ。そうすると余計に相手を勢いづけて、日本の選手はたて続けにポイントを失ってしまう。応援にはね、盛り上げない方がいいという場面もあるの。グッと我慢してね。

 私はそこらへんを分かってるから、レスリング協会の会長だった風間栄一さんにも信頼されていた。小林孝至さんがフリースタイル48キロ級で金メダルを獲った試合後、風間さんから、

「団長、明日も来てくれよ。チケットなら何とかするから。どうしても佐藤には金メダルを獲らせたいんだ。団長が来てくれないとダメなんだよー」

 って頼まれた。当初は別の競技会場へ行くつもりだったけど、フリースタイル52キロ級の佐藤満さんを応援に行った。見事に優勝! 日本男子がレスリングで金メダルを獲得したのは、あの時の佐藤さんが最後。ぜひロンドンでは24年ぶりの頂点に立ってほしいもんだ。私も応援に行きますよっ。

※週刊朝日 2012年6月22日号