食品に含まれる放射性セシウムの新基準値が、4月1日から適用される。食品が「一般食品」「牛乳」「乳児用食品」「飲料水」の四つに区分された。

 穀類や肉、魚、野菜などの「一般食品」は、暫定基準値の1キロあたり500ベクレルから100ベクレル、「牛乳」は200ベクレルから50ベクレル、「乳児用食品」は50ベクレルへと厳格化された。消費量が多い「飲料水」は200ベクレルから10ベクレルと、もっとも厳しくなった。

 原発事故後、淡水魚を含む38種類の魚介類から100ベクレル超のセシウムが検出されている。セシウムが海底土に蓄積されたためか、アイナメやカレイ、ソイ、マダラといった底魚の汚染が目立つが、食物連鎖の上位に立つスズキやブリなど中層を泳ぐ大型魚でも出ている。

 そうした状況を受け、茨城県と茨城沿海地区漁業協同組合連合会は3月下旬から、茨城県沖を三つの水域に分け、50ベクレル超の魚介類が採取された水域からの出荷を自粛するという独自基準を設定した。水域ごとに1カ月間、3カ所以上で検査し、50ベクレル以下なら解除するが、「一度、基準値を超えると、約1カ月は出荷ができなくなる」(同漁連の担当者)という厳しい措置だ。

 他県の漁業関係者が懸念するのは、この「茨城基準」が拡大することだ。茨城県と利根川を挟んだ千葉県銚子市の漁業関係者は、不満を隠さない。銚子沖では、昨年9月にマアジ1検体が50ベクレルを超えた。

「茨城のマアジは何度も50ベクレルを超えていて、いつ出荷自粛になってもおかしくない。そうなると、隣り合った水域なのに、茨城は自粛で銚子はOKとなる。そんな筋の通らない話を、消費者が許すはずがない。今後、消費者からの要求で『茨城基準』が他県まで広がったら、商売になりません。50ベクレル超の魚が見つかっている宮城や岩手も大打撃を受けますよ」

※週刊朝日 2012年4月6日号