中村勘九郎の名跡を継ぐ襲名披露興行が始まった。六代目となる新・新勘九郎は十八代目中村勘三郎の長男。2月の東京・新橋演舞場を幕開けに、3月は浅草の平成中村座、その後は大阪、名古屋、京都、福岡と続く。「週刊朝日」創刊90周年の「九」のよしみでご登場いただいた30歳の若き勘九郎は、「僕、写真が一番苦手なんですよ」と、はにかみながらもVサインをつくってみせた。

 家庭では、1児のパパ。襲名と同じ2月に、長男が1歳の誕生日をむかえる。子守歌代わりに、七五調の調べが耳に心地よい、河竹黙阿弥作品のせりふを読んで寝かしつける。理由は、「音痴な僕の子守歌を聞いて息子まで音痴に育っちゃ悪い」からだそう。

 襲名披露は「お祭り」ともいわれるだけに、当人もひいきのお客さんも気持ちが高揚する。「年に一度は名前をかえましょうかね」。新・勘九郎は、ちゃめっ気たっぷりに笑った。

※週刊朝日 2012年2月24日号