tenki.jpラボでは、今年も毎年恒例の「日本気象協会が選ぶ2021年のお天気10大ニュース」を発表します。日本気象協会の気象予報士が今年印象に残ったお天気ニュースを選びました。

1月 日本海側で豪雪  富山市で35年ぶりに積雪1メートル超え

前回の冬は、前半に冬型の気圧配置が強まり、度々強い寒気が流れ込みました。2020年12月15日から16日には群馬県みなかみ町藤原や新潟県湯沢町で24時間降雪量が100センチを超える記録的な大雪になりました。

年末年始も日本海側で雪の降り方が強まり、その後、2021年1月7日から11日には北陸を中心に次々と雪雲が流れ込み、短時間で記録的なドカ雪になりました。24時間降雪量、48時間降雪量、72時間降雪量などの記録更新が相次ぎ、新潟県上越市高田では24 時間降雪量が103センチになりました。富山市では8日午後11時に35年ぶりに積雪100センチを観測し、10日には最深積雪が128センチに達しました。

記録的な大雪で、福井県や新潟県で多数の車両の立ち往生が発生し、北日本から西日本にかけて道路の通行止めや鉄道の運休など交通障害が発生しました。

1月~5月 1月から黄砂観測 春は広範囲に飛来 東京は10年ぶりの観測も

春の使者ともいわれる黄砂が今年は1月の早い時期から日本列島に飛来しました。黄砂は、東アジアの砂漠域(ゴビ砂漠、タクラマカン砂漠など)や黄土地帯で、強風によって吹き上げられた多量の砂じん(砂やちり)が、上空の風によって運ばれ、日本では、春に観測されることが多くあります。

今年は真冬の早い時期から飛来し、1月14日には広島で、15日には新潟で、16日には福岡で黄砂が観測されました。現在の黄砂の観測11地点(札幌、仙台、東京、新潟、名古屋、大阪、広島、高松、福岡、鹿児島、那覇)で、1月に3日間、黄砂が観測されるのは、1999年以来、22年ぶりでした。

さらに、春(3月から5月)には黄砂が日本列島の広い範囲に度々飛来し、3月30日や31日、5月8日には東京でも黄砂が観測されました。東京で黄砂が観測されたのは、2011年以来10年ぶりでした。

3月 異例の高温の3月 桜の開花・満開は史上最早が続々

3月は暖かい空気に覆われ、気温は全国的にかなり高く、北・東・西日本では、1946年の統計開始以来3月として最も高くなりました。

この影響で、桜の開花・満開は史上最早の記録更新が相次ぎました。

3月11日に全国のトップを切って、広島で桜(ソメイヨシノ)が開花しました。広島が全国で最初に開花するのは今回が初めてでした。また、全国トップの開花が3月11日は、1953年の統計開始以来2番目の早さでした。桜の満開が全国で最も早かったのは東京と福岡で3月22日でした。東京は統計開始以来2番目の早さ、福岡は2013年と並び、最も早い満開になりました。

桜前線は例年より早いペースで北上し、3月31日には仙台と宇都宮、新潟で満開になりました。仙台と新潟では統計開始以来、初めて3月中に満開となりました。最終的に全国53地点中、開花が28地点、満開が20地点で統計開始以降、最も早い記録(タイ記録も含む)になりました。

7月 梅雨前線が停滞して記録的大雨  静岡県熱海市で土石流発生

7月の初めは本州の南岸に梅雨前線が停滞し、関東南部や東海を中心に雨が降り続きました。

7月1日には伊豆諸島北部で線状降水帯が発生し、気象庁は「顕著な大雨に関する情報」を発表したほか、神奈川県箱根町では、7月1日から7月3日にかけての総雨量が、7月の月降水量平年値の2倍に迫る803.0ミリとなりました。

静岡県熱海市網代では7月1日から7月3日にかけて、1時間に30ミリを超えるような激しい雨はなかったものの、断続的に雨が降り、3日間の総雨量が、7月の月降水量平年値のおよそ1.7倍となる411.5ミリに達しました。熱海市伊豆山の逢初川は、降り続く雨で土石流が発生し、20人以上の犠牲者を出す甚大な災害となりました。長い時間の雨で地盤が緩んでいると、短い時間のやや強い雨が降っただけでも、土砂災害の引き金になることがあります。

7月~8月 灼熱の北の大地 北海道で歴史的猛暑 旭川市で猛暑日が計10日

7月後半から8月上旬にかけて、北海道は高気圧に覆われて晴天が続き、記録的に気温の高い状態が続きました。

札幌市では7月19日に21年ぶりとなる、今世紀初めて最高気温が35℃以上の猛暑日を観測しました。また、7月21日から8月7日までの18日間、連日の最高気温30℃以上で、真夏日の連続記録を97年ぶりに更新しました。

さらに旭川市では連続真夏日日数を27日とし、105年前の17日連続を大きく更新したほか、昨年までの130年余りの統計期間で計7日だった猛暑日が、今年は7月19日から8月7日のわずか20日間で10日に上りました。7月31日に旭川市江丹別で観測した最高気温38.4℃は、1924年7月12日に帯広市で観測した37.8℃を更新し、北海道内の7月歴代1位となりました。

8月 真夏に異例の長雨  中国地方や九州地方に大雨特別警報

8月中旬は、日本付近に停滞した前線の活動が活発になりました。「2回目の梅雨」を思わせる天候となり、西日本から東日本の広範囲で大雨になりました。

8月11日から19日までの総降水量は、宮崎県えびの市で1267.0ミリと8月の月降水量平年値の2倍以上になりました。佐賀県嬉野市は117.8.5ミリと8月の月降水量平年値の4倍以上で、年降水量の平年値の半分を超える記録的な大雨になりました。

気象庁は、8月13日に広島県に、翌14日には、特に九州北部で線状降水帯による猛烈な雨や非常に激しい雨が降り続き、佐賀県や長崎県、福岡県に大雨特別警報を発表しました(広島県は一度解除された大雨特別警報が14日に再び発表されました。)広島県と島根県を流れる江の川や佐賀県の六角川が氾濫するなどの被害も出ました。その後も、西日本から東日本の太平洋側を中心に日降水量が多い所で200ミリを超える大雨となりました。

7月~9月 2年ぶりの台風上陸  異例のルートで初めて上陸した県も

昨年は台風の上陸数が12年ぶりに「0」でしたが、今年は平年と同じ3つでした。

1つ目は台風8号で、7月28日に宮城県石巻市付近に上陸しました。太平洋高気圧の縁辺流に流され、通常とは異なる東から接近し、1951年の統計開始以来初めて宮城県に上陸しました。

2つ目が、8月8日に鹿児島県枕崎市に上陸した台風9号でした。

3つ目は台風14号で、9月17日に福岡県福津市付近に上陸しました。先島諸島に近づいた後、数日ほど東シナ海で迷走し、その後、進路を東寄りに変え、9月17日に福岡県に上陸しました。日本に接近した台風が九州に上陸することは度々ありますが、福岡県に直接上陸するのは1951年の統計開始以来初のことでした。

9月 富士山で2度の初冠雪  平均気温の上昇で異例の見直しに

今年、富士山の初冠雪は9月7日に一度発表されましたが、その後、異例の見直しになりました。

富士山の初冠雪は、甲府地方気象台から目視で観測をしていて、「一日の平均気温が、その年の最も高い日」の後に、山頂付近が雪などによって白く見える様子が見えたことを確認して発表します。

今年は、富士山山頂の8月4日の一日の平均気温が9.2℃で、これ以降、この観測値を上回る可能性が低いと判断したことから、これが「1年の中で最も高い値」として、9月7日の雪を「初冠雪」としていました。しかしその後、9月20日に一日の平均気温が10.3℃(※)を観測し「1年の中で最も高い値」が更新されたため、9月7日の富士山の初冠雪は幻になりました。その後、改めて初冠雪の発表があったのは9月26日でした。

※9月としては観測開始以来2番目に高い値

9月~10月 秋はどこ? 東京地方に低温注意報  九州で10月初の猛暑日

前日までの暑さから一転、9月に月替わりした途端、オホーツク海高気圧の勢力が強くなりました。関東や東北の太平洋側に北東からの冷たい風の吹く日が多くなり、特に関東で記録的な低温となりました。東京都心では9月1日から7日まで、9月上旬としては113年ぶりに、7日連続で最高気温25℃未満となりました。また、東京23区には、4日から7日にかけて、夏期としては28年ぶりに低温注意報が発表されました。

その一方、9月下旬から10月前半は西日本を中心に晴れて、記録的な高温になりました。大分県日田市は10月3日に最高気温が35.7℃まで上がり、10月に九州で初めての猛暑日となったほか、15日には真夏日最晩記録を更新しました。鹿児島市は9月20日から10月14日まで25日連続の真夏日となり、秋(9月から11月)としての真夏日連続記録を更新しました。

10月 気象分野で初のノーベル賞  真鍋淑郎さんノーベル物理学賞を受賞

米国プリンストン大学の上級研究員、真鍋淑郎さんがノーベル物理学賞を受賞しました。

地球の気候をコンピューターで再現する方法を開発し、気候変動の予測に関する研究を切り開いたことなどが高く評価されました。いまから50年以上前に「二酸化炭素が増えれば地球の気温が上昇し、地球温暖化につながる」ということを世界に先駆けて発表し、こうした成果がもとになり、地球温暖化や気候変動の研究が進みました。

なお、2021年7月26日から8月6日に開催された国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)では、地球温暖化が起きていることだけでなく、地球温暖化が人間の影響で起きていることを、初めて「疑う余地がない」と評価しています。

近年、世界各地で異常気象が発生しており、気候変動問題が私たちに密接に関わっていることが分かります。真鍋さんのノーベル物理学賞の受賞が改めて気候変動問題を見つめ直す機会になればと思います。