七十二候「腐草為螢(くされたるくさほたるとなる)」。 〈tenki.jp〉|AERA dot. (アエラドット)

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七十二候「腐草為螢(くされたるくさほたるとなる)」。

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かぐや姫がいっぱい生まれてきたようです

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ホタルブクロ。関東では赤紫色の花が、関西では白い花が多いそうです。

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火を垂れて飛ぶ虫「ヒタレ」から「ホタル」になったとも

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成虫の寿命は一週間ほど。虫生(人生)最後の輝きです

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恋してるから、暗い場所が好きなの?

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ホタルを見たことがありますか? 6月11日〜15日頃は『 腐草為螢(くされたるくさほたるとなる)』。ホタルが光りだす時季です。ホタルは別名『朽草(くちくさ)』。土の中でサナギになり、羽化して地上に現れるその姿を見て、昔の人は「朽ちた草がホタルになる」と表現したのですね。清らかな光は命の灯そのもの。それにしても 点滅までさせて、ホタルたちは光で何をしているのでしょうか。

ホタル狩りは、光を愛でるおだやかな日本の遊び

浮世絵にもよく描かれてきた『蛍狩り』。
日本のホタル鑑賞の文化は、世界でも類がないものだそうです。
関東では、ゲンジボタルは5月下旬〜6月中旬、ヘイケボタルは6月中旬〜8月頃に見られます(歴史とは逆に、源氏の後に平家が台頭するようです)。
ゲンジボタルの出現時は、夜間に浴衣ででかけるにはまだ寒い時季なのですが、夏のように蚊がいないので優雅に「光るゲンジ」を鑑賞できそうですね。一方、画中の人物が田などに入ってホタルを追っているなら、それはたぶんヘイケボタル。日本人にもっとも身近といわれてきたホタルです。
少し昔までは、夏祭りの夜などにホタルをつかまえて帰り、蚊帳の中に放してはその光を楽しんだといいます。回避する虫(蚊)と愛でる虫(ホタル)をアミ1枚で分けるなんて、蚊とり器の部屋では真似できない楽しみかたですね。
螺旋状に麦わらを編んだ「ホタル籠」は、なぜか上部の入り口も底もなく、狩りの獲物ホタルがすぐ逃げ出せそうな作りになっています。「一緒につれて帰る」くらいの感覚だったのでしょうか。
子供がホタルを入れて遊んだことからその名がついたという『ホタルブクロ』という花も、もし提灯のようにして確実に持ち帰ろうとするなら、花の先を草などで縛ってふさがなければなりません。けれどなんとなく、たいていはそのまま筒状の花にホタルを入れて、透かしてみたり手で包んだりして、つかの間の光を楽しんだのでは・・・と思えてしまうのです。

ホタルの源氏と平家、由来はやっぱりあの人…

それは4月のある雨の夜。
ホタルの幼虫が、つぎつぎと水から上がってきました。そして、シャクトリムシのような歩き方で、光りながら濡れた地面を進んでいきます。
雨の日を選ぶのは、土が湿ってソフトになるのと、いままで住んでいた水の中とちょっと似た環境だから、ともいわれています。柔らかな土の窪みをみつけて頭からもぐり込み、自分が動けるだけの部屋を作るためなのです。
部屋の壁は、体から滲み出る液体をしみ込ませて固めた、まゆのような仕様。この中で約40日間を過ごしてからサナギになり、さらに10日目の夜。いよいよ羽化がはじまるのです。
成虫になったホタルは、そのまま3日間ほど部屋で過ごした後、土を必死にかき分けて、地上に出ていきます。晴れた日が続いて土が固まると、出られなくなって死んでしまうことも・・・。この時季の雨は、ホタルにとっても大切なのですね!
地上に出ると、すぐ近くの草の上でしばし休憩。そして、光りながら仲間のいる水辺の方へ飛び立っていくのです。
暗い静かな夜に、土の中からあらわれて光りだす虫。昔の人が草の化身だと思ったとしても、不思議はありません。
ホタルは『万葉集』や『日本書紀』にすでに記されていて、北海道から沖縄まで、日本には約30種が住んでいるといいます。なかでも代表的なのが「ゲンジボタル」と「ヘイケボタル」。いったいなぜ、こんな名に?
「ゲンジ」は『源氏物語』の主人公 光源氏の「光」にかけてつけられ、「ヘイケ」はゲンジより体が小さくて光も弱いので、源平合戦で負けた平家にちなんでつけられたという説があります。
淡紅色の胸の中央に、黒い十字形の模様があるのがゲンジボタル、太くて黒いスジがあるのがヘイケボタルです。

ホタルは最後の一週間を「光信号」で婚活します

ゲンジボタルなどの下腹にある発光器は、実際に光を作り出す発光細胞(酸化反応で発光するようです)と、その光を反射板のようにはね返して体の外に送り出す反射細胞の二層構造になっています。
ホタルの光は、現在の光源としてはもっとも効率性が高く、光を出すときも決して発熱しません。それで「冷光」と呼ばれています。
驚くことに、瞬時に発光させたり止めたりを自由自在に制御でき、しかも(人間よりはるか昔から)シグナルとしてお互いのコミュニケーションに光を用いてきたのです。ちなみに光は、敵を威嚇するためにも使われています。
オスは集団で一斉に点滅を繰り返し、メスはそれぞれが不規則に発光します。
みんなの光を集めれば、より遠くにシグナルが届いて、同じ仲間のメスに集合してもらいやすくなるのですね。 一方、 メスたちは点滅の周期をそろえないことで「私はここよ」とアピールです。
オスは、メスを探すために飛びながら約0.5秒に1回(地域差あり)発光します。
近くでオスが発光すると、メスは草や葉の上で約1秒に1回ピカーと強く光って応答、オスを誘います。その誘惑光を見つけたオスは、光りながらメスの近くに舞い降りて、歩きながらメスに近づき、約10cmに近づいたところでピカピカッと発光のしかたを変えるのだそうです。
すると。なんとメスは、自分の発光間隔をオスに近づけていくというではありませんか! 光のデュエット。こうして息が合ったカップルは、地表もしくは葉上で交尾に至るのですね。
ところで、同じゲンジボタルでも、西日本と東日本で違いがあるといいます。
オスの発光パターンの速度は、西のホタルは2秒間隔なのに対し、東のホタルは4秒間隔とのんびり。メスも、水辺の苔(こけ)に約500〜1000個産卵するとき、西のホタルはしばしば100匹くらいの集団になって産卵するのに、東のホタルはそんなことはほとんどしないのだそうです。東のホタルはマイペースが信条なのでしょうか。どちらにせよ、ホタルは産卵がすむとまもなく死んでしまいます。
また、婚活するのに光より「匂い」を使う種類のホタルもいます。世界中には多種のホタルが生息していて、点滅の仕組みなど まだわかっていないこともいっぱいあるそうです。

各地でホタルまつり開催!本物の光を体験しませんか

現在、ホタルを通して生きものと触れ合える環境を復元する働きが全国各地で試みられています。
心の疲れがたまる梅雨時。ホタルの光には、人を癒す「1/fゆらぎ 」があるといいます。
光っているホタルを見た経験がないという方も、リンク先をチェックのうえお近くの鑑賞スポットにおでかけになってみてはいかがでしょう。現地では、短命な恋人たちのランデヴーをそっと見守ってあげたいですね。
<参考>
『ホタルの不思議』大場信義(どうぶつ社)
『ホタル 光のひみつ』栗林慧(あかね書房)


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