ほかにも、テレビ朝日の「劇団ひとりの新番組を考える会議」では、期間限定で子犬を飼ってみるという企画を行った。子犬の精神的負担や動物愛護法第七条が定める終生飼養の観点から、この企画に問題はないのだろうか。問い合わせに対して同社広報部は「日ごろから適切な対応を心掛けている」などと回答した。

●動物の取り扱いについてメディアは自主規制を導入する時期

 動物番組の内情に詳しい業界関係者に取材すると、こんな話も聞こえてきた。

 「動物のありのままを伝えるまじめな内容よりも、犬の赤ちゃんをスタジオに連れてきてタレントがキャーキャー言いながら抱き上げるほうが、ヒット企画としてもてはやされる。撮影の現場では、出演タレントにも見せられないような動物への暴力が振るわれることもありますが、動物を思い通りに動かすためには黙認されてしまう。視聴率至上主義の構図のなかで、動物にしわ寄せがいくのです」

 こうした状況は、なぜ放置されてきたのか。

 米国には、あらゆる映像メディアでの動物の取り扱いを監視するAHA(アメリカ人道協会)という非営利組織がある。ハリウッド映画をエンドロールの最後まで見ていると、動物が少しでも出てきた作品であれば必ず、このAHAが定めた基準を満たしている旨を告げるクレジットが表記されているはずだ。ほかにも英国では、映画やビデオの撮影に動物を使う際の規制法がある。

 日本はどうか。民放連の放送基準やNHKの国内番組基準に動物に関する文言はない。各テレビ局の対応や主張もまちまちだ。

 昨今、動物福祉の観点から、犬やなどの繁殖業者や販売業者に対して、社会の厳しい目が注がれるようになった。テレビ業界でも、番組制作上の都合で動物を、その生態を無視して好き勝手に扱うことは自粛していくべき時期に来ていると思う。

 最近、日本映画を見ていると、「この映画の製作にあたって動物に危害は加えていません」などの文言がエンドロールに表示されることがある。AHAの取り組みを個別の作品ベースで踏襲しており、歓迎すべきことだ。ただ、客観性を保ち、そもそもメディアに利用される動物たちの福祉を向上させていくためには、やはり業界全体で取り組む必要がある。テレビだけでなく映画、そして私自身が身を置く新聞や雑誌も含めたメディア業界に提案をしたい。日本でもそろそろ、メディアが動物を利用する際の規則を自主的に取り決めてはどうだろうか。(太田匡彦)

※『GALAC(ぎゃらく) 4月号』より