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SKY-HIさんがAERAの表紙とインタビューに登場 「みんなが幸せになるためにシステムと闘う」/『AERA』11月27日発売
SKY-HIさんがAERAの表紙とインタビューに登場 「みんなが幸せになるためにシステムと闘う」/『AERA』11月27日発売
 11月27日発売のAERA 12月4日号の表紙はSKY-HIさんです。ラッパー、プロデューサー、経営者という多彩な肩書きを持ち、日本のエンタメシーンに新しい風を次々と吹き込むSKY-HIさん。見据えるものは何なのか、深い思いを語ったインタビューは必見です。巻頭特集は「ほったらかし新NISA」。来年1月からスタートする新NISAですが、なんだか難しそうと敬遠している人もいるでしょう。そんな方々に、ほったらかしておいても大丈夫な実用情報をお届けします。1テーマを掘り下げる「時代を読む」では「教育虐待」を取り上げました。子どもを追い詰める教育熱はなぜ生まれるのかじっくり考えます。将棋の棋士の多角的な面に迫る連載「棋承転結」には、藤井聡太八冠の師匠である杉本昌隆八段が登場。藤井八冠誕生の喜びなどを語っています。大好評連載「松下洸平 じゅうにんといろ」は世界的フラワーアーティストのニコライ・バーグマンさんをゲストに迎えた、全4回中2回目の対談です。ほかにも、多彩な記事が詰まった一冊をぜひご覧ください。   表紙&インタビュー:SKY-HI 表紙に登場するSKY-HIさんは、事務所の垣根を越えるダンス&ボーカルプロジェクト「D.U.N.K.」を立ち上げました。事務所の壁や先輩後輩の壁を取り払い、自由で楽しい雰囲気の中パフォーマンスできる舞台だと言います。「良い音楽が広がるためには健全なインフラがないといけない。業界の構造を正常化することは本当に大事」「みんなが幸せになるというシンプルなことのために、システムと闘い続けてきた」と語ります。その結晶とも言える「D.U.N.K.」の2回目が12月に開催されます。BE:FIRSTのSOTAさんと世界的ダンサーのRIEHATAさんのコラボ、SKY-HIさんとNissyさんの10年以上ぶりのステージなど話題が盛りだくさんです。変革を起こし続けるSKY-HIさんの今が詰まったインタビューです。そして撮影はもちろん蜷川実花。妖艶な光に包まれたアートな雰囲気の表紙とグラビアをぜひ誌面でご確認ください。 巻頭特集:ほったらかし新NISA 来年1月に始まる「新NISA」。「これだけやって放置すればOK」という、忙しい人もズボラな人も実践できるノウハウを詰め込みました。1月からスタートするには、申し込みの締め切りが12月上旬~中旬(クレジットカード積み立て)という金融機関も多く、今こそ考えるときです。ほったらかしておいても比較的安心できる商品はなにか、投資するにはどの数値に注目すべきか、初心者にもわかりやすくアドバイスしています。専業投資家テスタさんの「保有50銘柄」を一挙公開し、持ちっぱなしでいい高配当株を紹介する記事、金融機関の窓口でセールストークに騙されないための注意点を網羅した記事、全国の地銀62行のおすすめ投資信託を紹介する記事もあり、新NISAスタート前に必ずチェックしたい内容になっています。 時代を読む:教育虐待 教育の名のもとに行われる虐待。その結果、肉親の命を奪う事件まで起きています。ここまで子どもを追い詰める教育熱が生まれるのはなぜなのでしょうか。記事に出てくる一例では、有名大学を卒業し弁護士になった父親が、わが子にも同じ道を歩ませようと、小学校時代から過剰な勉強を課し、成績が思うようにならないと暴力を振るい子どもを追い詰めます。専門家は「大人たちに自分の信じている価値観を疑ってほしい。競争に勝ち、お金と高い地位を得ることが本当にすごいことでしょうか」と語りかけます。子育てやこの社会について考えさせられる内容です。 棋承転結:師匠・杉本昌隆八段が語る藤井聡太八冠 連載「棋承転結」に今号から4回登場するのは、藤井聡太八冠の師匠として知られる杉本昌隆八段です。振り飛車の名手で実力派の棋士として知られている杉本八段ですが、「藤井八冠の師匠」という肩書きのほうが先行する場合が多いです。そのことについても「それはしょうがないです」と笑う、温和でユーモアに富んだ人柄がにじみ出ています。藤井八冠誕生の喜びについても率直に語ったインタビュー。ぜひ全回シリーズでお読みください。 松下洸平×ニコライ・バーグマン 大人気連載「松下洸平 じゅうにんといろ」は、世界的フラワーアーティストのニコライ・バーグマンさんがゲスト。ニコライさんが考案し、世界的に人気を博しているフラワーボックスの誕生の経緯について、松下さんが興味津々に質問します。「花が好きで、自分でも時々買って帰って、自宅に飾っています」という松下さんと、花にまつわるトークです。ニコライさんの東京・南青山のフラッグシップストアで撮影した、おしゃれでシックな写真の数々も必見です。 ほかにも、 ・佐藤優・特別寄稿 池田大作の死と創価学会の今後 ・ガザ紛争の最新状況 戦闘停止合意の裏のせめぎあい ・イスラエルとパレスチナ 壁の向こうへのメッセージ ・阪神、オリックス 優勝パレードとファン気質の違い ・大腸がんで死なない X JAPANのHEATHさんも急逝 ・補導員のパトロール今も必要? PTAから強制選出の理不尽 ・GACKT×二階堂ふみ×杏 映画「翔んで埼玉」鼎談 ・上野樹里×林 遣都 自分を肯定する気持ちを ・武田砂鉄 今週のわだかまり ・ジェーン・スーの「先日、お目に掛かりまして」 ・大宮エリーの東大ふたり同窓会 初の東大出身力士・須山さん回を振り返り ・現代の肖像 一龍斎貞鏡・講談師 などの記事を掲載しています。 ※発売日の11月27日(月)正午からは、公式X(@AERAnetjp)と公式インスタグラム(@aera_net)で、最新号の内容を紹介する「#アエライブ」を行います。ぜひこちらもチェックしてください。 AERA(アエラ)2023年12月4日号 定価:470円(本体427円+税10%) 発売日:2023年11月27日(月曜日)
AERA 2023/11/24 17:40
佐藤優「日本は戦争をやめさせる仲介者としてはすごくいい立ち位置」 加藤登紀子と「即時停戦」を訴える
佐藤優「日本は戦争をやめさせる仲介者としてはすごくいい立ち位置」 加藤登紀子と「即時停戦」を訴える
作家・元外務省主任分析官 佐藤優さん(63、左):東京都生まれ。著書に『池田大作研究』『日本共産党の100年』『君たちの生存戦略』『希望の源泉・池田思想5』など/歌手 加藤登紀子さん(79):中国東北部ハルビン市生まれ。近著に『百万本のバラ物語』。5月26日に東京国際フォーラムホールCで「百万本のバラ物語」コンサートを開催予定(写真映像部・東川哲也)  ロシア軍がウクライナに侵攻してから2月24日で1年が経った。旧満州からの引き揚げ経験者で、歌手の加藤登紀子さんと作家で元外務省主任分析官の佐藤優さんが意見を交わした。即時停戦を求める2人は平和の尊さを訴えた。AERA 2023年3月6日号の記事を紹介する。 *  *  * 佐藤:昨年の5月ごろだと思いますが、加藤さんとウクライナの情勢についてお会いする機会がありました。そこで非常に印象に残っているのが「(第2次世界大戦での)日本の敗戦があと半年早かったらどういうふうになっていったと思いますか。1945年2月時点において、日本の指導層は日本がもう勝てないことはわかっていたでしょう」というお話でした。 加藤:そうでしたね。 佐藤:日本は停戦を選ばなかった。その結果なにが起こったかというと、東京大空襲、沖縄戦、ソ連の参戦、広島・長崎への原爆投下です。これは加藤さんならではと思ったのは、朝鮮半島の分断も起きなかったのではないか、もし日本の政治指導部が半年早くこの勝てない戦争に関して終戦という判断をしていれば、どれだけ多くの命が救われて、その後の歴史もどれだけ変化したか──ということです。それを聞いて私もその通りだなと思ったんです。 加藤:ドイツのヒトラーが敗北した後、3カ月以内にソ連が参戦することを決めたヤルタ会談を日本はキャッチしていなかったのでしょうか。 佐藤:最近、産経新聞の岡部伸(おかべのぶる)さんが、スウェーデンに駐在する武官がソ連の対日参戦の情報をつかんでいた、と書いていました。いずれにせよ、断片的な情報は取れていても、その情報を判断する人がいなかったのでしょう。軍隊が情報を無視することは、よくある話です。 加藤:ドイツは45年5月に敗北するわけですが、ドイツがそろそろ敗北します、というような情報は日本にも入っていたわけですよね。それでも日本は戦争を続けました。これはいったいなんだったのでしょう。 佐藤:(諜報やゲリラ戦を教える機関の)陸軍中野学校などは、日本が占領されることを前提にゲリラ戦の準備を始めるわけです。ですから、戦争指導部は負けることをよくわかっていたんです。ところが、やめられなかった。 ■日本は武器を送ってない、仲介者としてはすごくいい  なぜ日本はそういったことをやめられないで意思決定を間違えるのかということについて、慶應義塾大学商学部教授の菊澤研宗さんが著書の『命令の不条理』でこう言っています。(南太平洋の激戦地)ガダルカナルなどをめぐる戦いは、一般の常識ではアメリカが合理的で日本は非合理的だったと言われているけれども、日本も十分合理的だったと。 ウクライナ東部ドネツク州のバフムートで破壊された建物。ロシア軍とウクライナ軍の激戦が続いている(photo ロイター/アフロ)  ガダルカナルみたいな戦いをやったら負けるのはわかっている。しかし、大本営が、しかも現場もやらせてくれと言っている。今まで進んできたものを転換するのは政策転換のコストがかかるから、もう無理だというところにくるまで政策転換ができないということでした。終戦の時もそうだったのだと思います。 加藤:それが日本の特性ですか。 佐藤:日本だけでなく、人間の限定合理性によるものだと思うんです。例えば最近のオリンピックもそうです。どうして(コロナ禍の中で)こんな変なオリンピックに突っ込んでいったのかと。 加藤:そういう状況が日本の戦争にもあったということですね。 佐藤:まさにそういうことです。今もその状況に近づきつつあるのではと思うんです。日本はウクライナに殺傷能力のある兵器を送っていないし、支援もほとんどしていないわけですから、逆に戦争をやめさせる仲介者としてはすごくいい立ち位置にいます。兵器を一つも送っていないということは、日本が送った兵器によって殺されたロシア人が一人もいないということですから、ロシアの日本に対する感情は決して悪くないんです。それなのに岸田文雄首相が勇ましい勢いでキーウに行ったらロシア人はどう思うでしょう。 加藤:今後、日本は武器を送るつもりなのでしょうか。日本は武器を持たない国だというポリシーを徐々に切り崩していって、武器を持つ国へと一気に進んでしまおうとしています。 佐藤:武器を持ち、武器を送る国へと一気に進みたいと思っている人たちはいます。ただ、私はそこまでいかせてはならないと思います。  報道の扱いは大きくありませんでしたが、1月11日に創価学会の池田大作さんがウクライナ戦争に関する緊急提言を発表しました。そこでは「ロシアの侵略」ということを一言も言わず、「国連主導で両国の外務大臣を集めて早期に停戦交渉をさせた後に、首脳会合をやり停戦させろ」と言っているんです。創価学会を支持母体とする公明党は、この池田さんが言ったことに影響されます。そうなると自民党も遠慮しないといけなくなる。だから、日本がウクライナに兵器を送れない要因の一つは池田さんだと思うんです。 ■中国がロシアみたいな目に遭いたいと思うのか 加藤:今の政権の正体がわからないですね。あれよあれよと言う間に戦争ができる国になってしまいそうで。 佐藤:岸田政権になってから、どんどん変わりました。安倍晋三政権のほうが勇ましいように見えましたが、実際にはブレーキがかかっていました。  岸田政権を見ていると、深海魚のようです。上のほうの世界からは見えない深いところで、自分たちの論理だけで動いている。それで支持率も20、30%台で大丈夫だとなっている。上まで浮いてきてくれれば、ケンカの仕方もいろいろあるんですけどね。 加藤:難しいですね。 佐藤:戦争をやめさせれば、経済の問題も軍事の問題も回転していくんです。アメリカは日本を完全に破壊するだけの核兵器を持っていますが、アメリカが日本に核兵器を落とすと考えている人はいません。なぜなら、アメリカにその意思がないから。すなわち日本を攻撃する必要がないという関係を、政治的・外交的に作ればいいんです。それこそ昨年の2月以前はロシアが日本を攻撃してくるなんて、誰も思っていなかった。中国だって特に行動が変わっているわけではないのに、日本人のイメージとしては中国が攻めてくるのではと思っている人が増えました。 加藤:根拠がないですよね。 佐藤:台湾海峡有事になると言いますが、ロシアがこんな戦争を始めて、世界中から非難されていて制裁を受けている。中国がそれを見て、自分たちも制裁戦争を始めてロシアみたいな目に遭いたいと思うでしょうか。経済成長を続けている中国は、あと20年経てばアメリカの水準になる可能性があります。台湾の中でも国民党の人たちには経済成長した中国と一緒にやりたいと思っている人もいるわけです。柿が熟して落ちてくるように、あと20年ゆっくり待ったほうがいい。この二つのシナリオぐらい、誰でも思いつくじゃないですか。なぜ、中国が数年以内に戦争に踏み込むって決め込むのか。 加藤:私は、佐藤さんのような緻密(ちみつ)なデータで動いているわけではないけれども、私たちのできることはなにかと考えた時に、人として自分の気持ちを率直にいつでも言えるという道を残しておくことだと思うんです。  そういう意味でも正しい歴史を伝えなければと思うんです。私は旧満州で生まれ、46年に引き揚げてきました。終戦というものに対して、日本はどう対応してきたのか。大陸に残された私たちが引き揚げられたのは日本の力ではありません。むしろ、中国の人たちが停戦をして引き揚げ協定に協力して、その間それこそ炊き出しなども中国人がしてくれたわけです。そういう歴史を伝えなければと思うんです。 佐藤:加藤さんの『百万本のバラ物語』でも書かれていますが、ふるさととは何かということだと思うんです。例えば、ロシアは今、ウクライナの4州を併合して21世紀の旧満州国のような領域を作っているわけです。でも、そこにいる人たちは国家の政策とは関係ないと思うんです。だってウクライナの東や南の人は、日常的にはロシア語をしゃべって、ロシア正教会の教会に通って、ロシア文化の中で育っている。ただし、ウクライナのパスポートを持っていて、そのことに特に違和感を持っていなかった。それが突然、お前はロシア人かウクライナ人か選べと。 加藤:そういうことがウクライナで起きているんですね。今までのようなロシア語を話したままウクライナ人であることは許されなくなっているのは分断を強めてしまいますよね。 佐藤:自分たちでは何人だと考えたこともないのに、選ばないといけない。それで、選び方によっては親子、きょうだい、友だち同士が殺し合いをしないといけない状況を作り出しているわけです。これは絶対にやめさせないといけません。我々は無力だと思ったらいけない。微力なんだけども無力じゃないんです、みんなの力を合わせれば。元はラトビアの子守歌だった「百万本のバラ」はロシア、ウクライナ、ラトビア、ジョージア、そして日本で歌い継がれています。歌を聞いたり歌ったりする時には、ロシア人もウクライナ人もラトビア人もジョージア人も日本人もみんなの心がつながるわけですから。 加藤:この歌は(東西冷戦時代に)その東西のカーテンを揺るがした。つまり、自由に向かってあのカーテンを開いた。大きな役割を果たした歌だと思うんです。 (構成/編集部・三島恵美子) ※AERA 2023年3月6日号より抜粋
AERA 2023/03/04 11:00
日本共産党の「歴史を上書きする体質」を問題視 佐藤優「世の中に知らせないといけない」
日本共産党の「歴史を上書きする体質」を問題視 佐藤優「世の中に知らせないといけない」
作家・元外務省主任分析官 佐藤優さん(62)  今年、結党100周年を迎えた日本共産党のことを、どれほどの人が正しく理解しているのだろうか。AERA 2022年8月8日号は、『日本共産党の100年』を上梓したばかりの作家で元外交官の佐藤優さんに聞いた──。 *  *  * ──日本共産党を追った『日本共産党の100年』(朝日新聞出版)を執筆されました。  私は『池田大作研究 世界宗教への道を追う』(同)を2020年に出版しました。公明党と日本共産党は表と裏なんです。同じような有権者のマーケットを取り合っていますし、政策的にもかなり似ています。今、日本では価値観をきちんと持った政党は、公明党と日本共産党だけですから、私が創価学会を扱ったということは、同時に日本共産党についても扱わないといけないわけです。自公政権ではあるけれども、政策的には公明党の影響力は議席数をはるかに超えています。そういうことからも、もう一つの裏テーマである日本共産党をしっかりと見なければいけませんでした。  直接の契機は、一昨年の日本学術会議問題です。私が「文藝春秋」に寄稿した際、日本共産党は通常の取材ではなく、彼らのネットワークを使って(党の機関紙)「しんぶん赤旗」で、私を名指しして攻撃しました。このことによって、この党の体質は昔も今も変わってないという認識が強くなりました。  野党共闘など、日本共産党の動きは活発です。改めてどんな思想を持った党なのか体系的に書いておきたかったのです。  考察は党の文献を中心に読み解いていきました。現在の党の立場を最も反映している『日本共産党の八十年』を基本に据え、大きな書き換えがあったり削除されていたりする事柄は『六十年』、場合によっては『七十年』を用いました。比べてみると、『六十年』は分厚いのに『八十年』は薄くなっています。 ロシアのウクライナ侵攻で物価上昇が続く。佐藤さんは、格差の是正を訴える日本共産党に他の野党が追随する可能性が大きいと見る(photo=Abaca/アフロ) ■歴史を上書きする体質  理由があります。現在、武力革命路線を示した1951年綱領については一部が作った文章だと言っていますが、さかのぼると共産党の資料集にも入っているわけです。そういうものを絶版にして歴史を全部上書きしていく、この体質がずっと続いているのです。  例えば、100周年を迎えた「しんぶん赤旗」の記事でも、コミンテルン(共産主義インターナショナル)の日本支部として出発した日本共産党の話は出てきません。しかし、『八十年』までは出てくるんです。今年出版された志位和夫委員長の『新・綱領教室』(上・下巻)でもコミンテルンの文字が消えています。出自自体を変えてしまっているんです。非常に問題だと思うから、世の中に知らせないといけないと思ったのです。 ──近年の日本共産党のソフト路線はリベラル層を中心に注目を集めましたが、7月の参院選では票を伸ばせませんでした。  今の時点では、一定の警戒感が国民の中にあると思うんです。本来リベラルと共産主義は相いれないものでしたが、リベラルの一部が日本共産党の中身をよく分からないで同調しています。また、日本共産党もそれを統一戦線戦術策に使います。ここのところが危ういんです。社会主義革命、共産主義革命の船に乗るんですか、その船に乗ってどこに行こうとしているんですか、ということです。 今年創立100年を迎えた日本共産党の志位和夫委員長(左)と小池晃書記局長。「なにより、いのち。」をスローガンに、格差是正、ジェンダー平等などに取り組む ■ぜひ読み比べて判断を  リベラルが細ってしまったことが一番の問題だと思います。要因の一つは、岸田(文雄)首相が所属する宏池会です。宏池会にはリベラルな要素があります。リベラルは、経済においてはネオリベと非常に近くなっています。  政治におけるリベラルな人と経済におけるリベラルな人というのは本来、だいぶ違っているのです。経済におけるリベラルな人は、どちらかというと既存の体制、新自由主義的な経済政策に伴う小さな政府という考えですから。でも、伝統的なリベラルと社会民主主義的な考え方は自公の枠の中で吸収できるので、今の政権はリベラルとして独自の立ち位置に立つわけです。  日本共産党について言えば、共産党というメニューが政治の世界に出てきたときに、そのメニュー、成分はどういうものなのか、どういう手順で作られているかということを理解した上で、投票するかしないかを決めたらいいと思います。  本の「あとがき」でも書きましたが、党の現在の一番の規範となっている『新・綱領教室』には、私とは違う観点や主張も盛り込まれています。ぜひ読み比べて、良識で判断してほしいと思います。 (構成/編集部・三島恵美子)※AERA 2022年8月8日号より抜粋
AERA 2022/08/05 08:00
創価学会員ではない佐藤優 新刊「池田大作研究」で問いたかったこと
創価学会員ではない佐藤優 新刊「池田大作研究」で問いたかったこと
佐藤優さん (c)朝日新聞社  約10年前、雑誌への寄稿で創価学会名誉会長の池田大作氏に言及した際、作家の佐藤優さんは知人たちの反応に違和感を抱いた。 「『変なところに首を突っ込んだね』と一様に心配され、驚きました。創価学会に関して肯定的な発言を許さない空気に危うさを感じました」 巨大な影響力を持つ宗教団体をなぜタブー視するのか。多くの人は創価学会を理解した上で、批判しているのか。今回、佐藤さんは池田氏の著作『人間革命』『新・人間革命』を読み解き、池田氏の足跡を辿ることで創価学会のありようを浮き彫りにした。それを『池田大作研究 世界宗教への道を追う』(朝日新聞出版 2200円・税抜)にまとめた。 「本書でも触れましたが、私はキリスト教の洗礼を受けています。学会員ではありません。ただ、キリスト教を批判するのに新約聖書を読まなくては議論になりません。同じように創価学会を論じるならば、池田氏の著作を読むべきですが、外部から学会を批判する人の多くにはそうした形跡が見当たりません。外形的な批判に終始してきた印象です」  本書の中で、特に力を入れたのは、北海道夕張市での炭鉱労組事件だ。創価学会が国政に進出した1950年代、夕張で創価学会系候補が票を集めた。社会党の牙城だった日本炭鉱労働組合が学会員の活動を規制するなど圧力をかけた。 「両者は一触即発になり、公開討論会まで予定されましたが、最終的には内々の対話で解決しました。この事件は創価学会の平和主義を考える上でも見逃せません。目の前に分厚い壁があった場合、壊そうとするのが社会革命家。ところが、創価学会は壁を壊そうとしません。壁が分厚ければ向こう側にいる人と友達になればいいと考えます。公明党が国や地方の政治で常にキャスティングボートを握ることとも無縁ではないはずです」  創価学会と公明党は切り離せない関係だが、日本における政教分離に対する誤解についても、わかりやすく解説している。 「政教分離は国が宗教団体に介入すること、宗教行事を行うことを禁止したものです。宗教が政治にかかわるのは憲法違反ではありません。宗教色が強い候補者よりも、宗教的に中立を打ち出している候補者の後ろに宗教団体が隠れている場合のほうが問題ではないでしょうか」  博覧強記で知られ、1カ月に600冊以上に目をとおす。関心は宗教のみならず多方面に及ぶが、メディア考察の一環で「1936年」に最近は注目しているという。 「二・二六事件が起こった裏で阿部定事件と上野動物園からのクロヒョウ脱走事件が起きました。メディアは阿部定とクロヒョウを競って報道し、国民の関心が政治に向かわないこともあり、政治の暴走が止まらなくなりました。ですから、現代のニュースのワイドショー化も非常に危険をはらんでいます」  国家権力と対峙した佐藤さんだからこそ見えるものがあるのかもしれない。(栗下直也) ※週刊朝日  2021年1月29日号
週刊朝日 2021/01/23 17:00
創価学会、中国での活動解禁はいつに? 中国側は「非常に関心があると思う」と佐藤優氏
創価学会、中国での活動解禁はいつに? 中国側は「非常に関心があると思う」と佐藤優氏
対談を行った佐藤優氏と澤田瞳子氏。連載に記された内容の「その後」を展望する話題で大いに盛り上がった(撮影/楠本涼)  佐藤優氏のAERAでの連載を収録した書籍「池田大作研究 世界宗教への道を追う」が出版された。AERA 2020年11月23日号では、同書について佐藤氏と作家の澤田瞳子氏が語り合った。 *  *  * 澤田:本を拝読していて、非常に面白かったことがあります。池田大作氏の機械工学の技術が非常に役立っているというお話。この間、作家の安部龍太郎先生とお話ししたんですが、安部先生、機械工学のご出身なんですよ。なぜその安部さんが歴史小説をやろうとしたかという話になったとき、理系の人間は、結論に至るまでの過程をとても大事にする、と。だから家康が天下を取った話のときには、権力掌握の事実のみを語るのではなく、その過去をさかのぼって原因を分析する。歴史分析に必要な眼差しは、理系の人間の考え方と近いとおっしゃっていました。 佐藤:安部先生の場合、種子島に鉄砲が伝来したことについても、火薬に必要なものは硫黄と硝石と木炭で、硝石さえあれば種子島には硫黄があるから作れる。そうするとあれは、やはり意図的に来たんじゃないかって結び付ける。非常に説得力がありますよね。 澤田:そうなんです。理系の方って、そういうさかのぼり方ができるわけです。池田氏の機械工学の話が出てきたときに、あ、ひょっとしてこれと関係あるのかもしれないと考えたわけです。 佐藤:あると思います。池田氏の中にそういった工学的な発想というのは。 澤田:さきほどの「詰めない」という話も、過去をずっと見てこられた方だったら、そこは詰めないほうがいいだろうなと、そのメリットをよくご存じのはずなんです。 佐藤:それを計算してやってるんじゃなくて何となくそうなってるって、私なんかは思うんですよね。それがやっぱり宗教の強さだと思うんですよ。計算するとダメなんですよ。 澤田:池田大作氏が初代ではないことも大きいのかもしれないと感じました。第3代ということは過去があって、そして未来がある事実を意味するわけですし。 ■中国での活動解禁に注目 無視できない影響力生む 佐藤:ある種の上書きで少しずつずらしていくわけですよね。戸田城聖は牧口常三郎を少しずらしてきてるし、池田大作も戸田城聖を少しずらしている。だから、そのズレの中の面白さがあるんです。時系列でテキストを読むと、あれ、変わってきてるじゃないかということがある。さらに時系列を逆にして読むことで、新たな視点が見えるという面白さもある。キリスト教でも、旧約聖書から新約聖書に入っていくと大体つまずいちゃうんですよ。新約から旧約にいかないと。 澤田:そうなんですか。確かに子ども時代、イエス様を教えられてから旧約にいきました。ところで、今、創価学会員の方が、子どもたちに新しく教えるときは、どこからスタートするんですか。 佐藤:それは日々の勤行(ごんぎょう)。親が生活をするということでしょうね。 澤田:なるほど。ちなみに佐藤さんが今、世界宗教の動きで注目していることはありますか。 佐藤:世界宗教に対して力を持っていきそうなのは、やっぱりイスラムでしょうね。ヨーロッパでもアメリカでも、かなりの広がりを持ってきている。今後、アジア、それから中南米なんかでも広がりを持つでしょうね。アフリカでも、イスラムの広がりは非常に強くなっているでしょう。 澤田:ええ。イスラムの広がりは、今の世界情勢とすごく関わっているように見えますが、創価学会の場合、世界情勢に左右されることってあるんでしょうか。 佐藤:これから左右されてくると思いますよ。特に中国との関係において。私は、中国で創価学会の活動が解禁されるのはいつになるのかと思っているんです。そうしたら、あっという間に学会員が増えることになります。そうすると、もう無視できない、さまざまな影響力が生まれます。 澤田:韓国でも今、学会員さんは多いんですよね。 佐藤:多いです。百数十万人規模だと思います。竹島問題とか歴史問題で、決定的にぶつからないバッファとしての役割を、実はかなり果たしているんですよね。 澤田:これから先、海外に出た創価学会が、それぞれの国で政党的な力を持つ日というのは来るんでしょうか。 佐藤:今のところはそういう動きを示していないです。長期的に、そうなる可能性を排除してないと思います。これは各国が置かれた状況で変わってくるでしょう。公明党に相当するような政党というのは、ほかの国ではいまのところはないですよね。でも、創価学会の価値観からすると、信仰即行為で、政治の領域を信仰から除外してはいけないということだから。 澤田:そうなったときに、海外において創価学会が排斥されることも、また起きてきますかね。 佐藤:フランスのような国においては、その可能性があるということですよね。 澤田:そうですね。 佐藤:でも、それ以外の国には逆に、宗教がバックグラウンドにあるような政党っていくらでもありますから。それが一つ増えたんだっていうくらいのことなんでしょう。むしろ創価学会のほうが、その可能性を持っているのに、可能性を使ってないという非常に慎重な感じがしますね。世界の国々の文化や習俗を尊重していて、現地で信仰が根付くよう“土着化”することに時間をかけている。国の政治体制にもよりますが、政治はその後だと思います。 澤田:なるほど。ちなみに一番最初に政党ができるとすればどこでしょう。 佐藤:政党を具体的に作るかどうかはわからないんですけれども、イタリアではかなり力がありますよね。 澤田:イタリアですか。なかなかイタリアと創価学会って結び付かないです。 ■体制とぶつからない道探れる宗教に関心がある 佐藤:2015年にイタリア共和国がイタリア創価学会とインテーサ(宗教協約)を結んでいます。いずれにせよ、あり方はその国の文脈によって決めていくっていうことだと思います。だから、今の時点では、まだその時期ではないと思うんですよ。私がいま関心があるのは、やはり中国がいつ外国宗教の解禁をするのか。そのときの外国宗教で念頭に置いているのは、創価学会とカトリックだと思います。中国はそれらとの関係をどうするか、すごく考えているでしょうね。  中国は経済においては資本主義ですからね。そうすると中国共産党は、マルクス主義が持っていたような「人々を解放する」という側面、あるいは毛沢東思想が持っていたその意味における正当性っていうのは、非常に弱くなっているわけですよ。社会の矛盾や問題、あるいは人々の悩みっていうのを、イデオロギーで解決できなくなっています。放置しておくと、昔の太平天国の乱みたいなことが起きる。だから、社会と体制との関係において、ある種折り合いをつける、社会の安定に貢献する宗教は、絶対に必要なんですよね。中国は、宗教が外国の植民地主義の手先になるという危険さを、よくわかっているんです。そこで今、すごく悩んでいると思うんですよ。 澤田:そういう意味で、歴史を学べば学ぶほど、安全な宗教から接触したほうがいいということがわかるわけですね。 佐藤:そういうことです。いま中国のあちこちの大学には、池田思想研究所っていうのが設けられているんです。 澤田:中国にですか。 佐藤:そうです。それは宗教としてではなくて、池田大作氏の思想を研究するというものです。でもその思想は、信仰体系と離れていないわけです。当然のことですよね。日本の中において創価学会は、天皇制とぶつかる形でスタートしたんだけれども、今は与党側に入っている。ということは、体制とぶつからない道を探れるということです。中国においても、「共産党体制とぶつからない形での宗教」を探るということからすると、中国は創価学会に非常に関心があると思うんですよね。 澤田:面白いですね。 佐藤:今後も池田氏と創価学会に関心を持ち続けたいと思っています。 (構成/編集部・木村恵子) ※AERA 2020年11月23日号より抜粋
AERA 2020/11/19 07:02
創価大学に“宗教色”ゼロなのは「世界宗教になっていくことを本気で考えているから」 佐藤優氏が指摘
創価大学に“宗教色”ゼロなのは「世界宗教になっていくことを本気で考えているから」 佐藤優氏が指摘
佐藤優(さとう・まさる)/作家・元外務省主任分析官。『創価学会と平和主義』『危機の正体』『ウイルスと内向の時代』『世界宗教の条件とは何か』など著書多数。2020年の菊池寛賞を受賞(撮影/楠本涼) 澤田瞳子(さわだ・とうこ)/作家。2010年、『孤鷹の天』でデビュー。『満つる月の如し 仏師・定朝』で新田次郎文学賞受賞。『若冲』『火定』『落花』『能楽ものがたり 稚児桜』で4度の直木賞候補に(撮影/楠本涼)  AERA本誌で集中連載を終え、書籍化された『池田大作研究』。AERA 2020年11月23日号で、筆者の佐藤優氏と作家の澤田瞳子氏が語り合った。 *  *  * 澤田:これからもまだ、池田大作氏や創価学会について注視していかれるのですか。 佐藤:はい。この本の中で書けていないことも、やっぱりあるんですよ。創価学会インタナショナル、SGIです。これがどのような発展をしていくかということについては、やはり関心を持っていますね。あと、教義的なことにも関心はあり、日寛教学がどのように再編されていくのかにも注目しています。 澤田:私、今回の対談のために初めて、創価大学のサイトを見たんですけど、宗教学部に近いものはないんですか。 佐藤:ないです。あえて作っていないんです。 澤田:じゃあ、例えば入学式とか卒業式とか、そういうときに宗教色は。 佐藤:ないんです。創価大学の中で、例えば寮とかで勤行(ごんぎょう)をやっている学生は当然多いわけなんですけれども、創価学会専用の宗教施設は大学内にはないんです。イスラム教の礼拝ができる施設はあって、これは留学生用です。イスラム教の礼拝場はありますが、創価学会の専用施設はありません。創価大学は宗教学大学ではないという立場を明確にしています。 澤田:そういうお話をうかがうと、創価学会はよその宗教や、よその文化に対しても、ものすごく敬意を払う団体なんだと感じますね。 佐藤:そこは、やはり世界宗教になっていくことを本気で考えているからですよね。池田大作氏がイギリスの歴史学者のアーノルド・トインビーや、ハーバード大学の神学の教授、ハーヴェイ・コックスら、いろいろな文化、宗教の人たちと対話しているという特徴がありますからね。 澤田:宗教というのは長く続けば続くほど、文化と密接に関わってくると思います。創価学会はほかの文化に非常に敬意を払っている。それは、我々がほかの宗教を見る時に必要な目ではないのかな、とも感じるわけです。 佐藤:公明党のスタートということも考えてみると、創価学会の文化部から始まっているわけです。文化に政治を包み込んでいくという考え方が、創価学会員には濃厚なんでしょう。さまざまな文化があるということを認めて、多元性に立たないといけないから。ほかの宗教や文化を尊重できるっていうのは、自信があるからなんでしょうね。そういったものの影響を受けても、自分たちの信仰の本質が揺らぐことはないという自信。でも意外とそれ、知られてないところなんです。 澤田:創価学会関係の出版物がたくさんありますが、出版社を複数持っている宗教団体というのも珍しいです。「潮」と「第三文明」と……。 佐藤:僕は「第三文明」で松岡幹夫さんと対談をしています。大石寺(たいせきじ)のお坊さんだったんだけれども、創価学会との訣別があったときに、創価学会側についたお坊さんですね。彼には、なぜそういう人生を選択したのかとか、教義的なことを教えてもらったりしています。 澤田:学会員ではない佐藤さんが教義の解釈を話すということですね。 佐藤:あの人たちは全然そこのところは問題視しない。その意味では極めて寛容なんですよ。もっとも日本でも、キリスト教の教義について話す学者でキリスト教徒でない人もたくさんいますから。創価学会の人たちは、自分たちの解釈に自信を持っている。あと、私が悪意を持っていないということはわかっているわけですよね。 澤田:それは大きいでしょうね。 ■コロナという難に直面 排外主義に歯止めかける 佐藤:だから、よく創価学会の婦人部の方たちに話しかけられるんですよ。佐藤優さんだね、いい本書いたらしいねって。あんた信頼してるからと。あと、今世はキリスト教でいいから、何回か輪廻転生を繰り返したら、うちのほうに来るだろうねと。そうすると逆に、横で聞いていた創価学会の幹部の人たちがあわてていました(笑)。 澤田:今世はキリスト教でいいからねって、明るい表現ですね。これは他宗教との優劣がないということでもありますよね。 佐藤:彼ら彼女らは、人間に強い関心があるんじゃないんですかね。生命、人間主義っていうことを重視する。それとつながるのが、この本の中で何度も出てきた「難」という言葉。苦難がやはり信心を強化する。人を強化する。だから、今このコロナという「難」に直面したときに、排外主義が強まっていくなかで、それに歯止めをかけてくれるっていう役割を、私は創価学会に非常に期待しているんです。創価学会員は、ナショナリズムや戦争に向けた動きがあっても、動かないんですよ。どんな理屈をつけて誰がどうやって動かそうとしても、体が動かない。だから、創価学会は、あれだけ激しい対立を日蓮正宗と起こしても、死者が一人も出てない。これもすごいことなんですよ。 澤田:そうですね。小説家の立場からすると、日蓮というのは、みんな興味を持つけれど、書くのに少々覚悟がいる人物です。そういう意味でも、創価学会のほうからアプローチしてみると実は捉えやすい、という気が今、してきました。明治から敗戦までを知ろうと思ったときに、やっぱり日蓮系の流れっていうのは、どこかで押さえなきゃいけないんですよね。 佐藤:それは絶対必要です。特に創価学会の人にとっては、日蓮ではなく釈尊から始まるというのは、モーゼとかアブラハムとか、あのへんの話をしてるように聞こえるんです。そうじゃなくて、イエス・キリストからスタートするということだったら、日蓮からスタートしないといけないんです。日蓮こそが、末法の時代の本仏なんだと。 澤田:対外的危機意識と日蓮を絡めて、その見方がどういうふうに変遷してきたかということには、個人的な興味があります。 佐藤:立正安国論の位置付けとも非常に関係してくるわけですよね。佐渡に渡る前の日蓮の業績も、創価学会は非常に重視するじゃないですか。これは時代の危機意識と関係してると思うんですよ。 澤田:創価学会の歴史を追いかけていくと、本当にこう、キリスト教がずっとやってきたことをぎゅっと短縮して、「NHKスペシャル」のようにまとめて見ているのと近い感覚を覚えます。 ■曖昧にしておく力がある 機が熟すまでは決めない 佐藤:私にも、そういうふうに見えるんですよね。だから今回の本は、その点が創価学会の人からしても、意外な面白さだったと思うんです。その中で見えたこととして、創価学会は池田大作氏を信仰の核心においていくという信仰体系がある。私はこれに全然違和感がないんですよ。キリスト教もそうですから、結局。 澤田:なるほど。ただ池田大作氏は存命でいらっしゃるというところが、私からするとイエス・キリストと一緒にしていいのかというのがあるのですが……。 佐藤:本来仏教の考え方だと、悟りっていうのは誰でも開けるわけだから。悟りを開いたんだったら、それは仏なわけだから。 澤田:そういう意味では私は、既存の宗教観に侵されているんでしょうね。宗教とはすごく過去に作られたものっていうイメージが、どこかにあるようです。 佐藤:あと、創価学会の面白さに、「曖昧にしておく力」があるんですよ。例えば信濃町に広宣流布大誓堂というのがあるんですが、これが他宗派でいう本山に相当する中心なのか中心じゃないのか、よくわからないんですよね。SGIも、会憲ができるまでは「創価学会インタナショナル」教という宗教であるとも、各国の創価学会のネットワークであるとも、どっちとも読めたわけなんです。「機が熟すまでは物事を決めない」っていう、中途半端にしておく力がすごくあるんですよね。  それはやっぱり、池田大作氏の発想で、それが教団の集合的な意識を作っているんだと思いますよ。無理やり型にはめて「これで行かないといけない」ということになると、教義主導で、現実を切り捨てちゃう。わからないところはわからないままで、歴史に委ねるみたいなところがあるんですよね。 (構成/編集部・木村恵子) ※AERA 2020年11月23日号より抜粋
AERA 2020/11/18 07:02
佐藤優氏「戦争を阻止する役割」を創価学会に期待 作家・澤田瞳子氏との対談で語る
佐藤優氏「戦争を阻止する役割」を創価学会に期待 作家・澤田瞳子氏との対談で語る
対談を行った佐藤優氏と澤田瞳子氏。佐藤氏は連載を終え、文学を専門とする澤田氏と語り合いたかったと話す(撮影/楠本涼)  作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が、AERAでの連載をまとめた書籍「池田大作研究 世界宗教への道を追う」を上梓した。連載の中で宗教としての創価学会を見つめ続けた佐藤氏は、創価学会はまだ変化の途中にあると指摘する。AERA 2020年11月16日号で、佐藤氏と作家の澤田瞳子氏が語り合った。 *  *  * 澤田:今の創価学会は、キリスト教の長い歴史で見ると、だいたいいつごろに当たりますか。 佐藤:ミラノ勅令(313年)ぐらいですね。 澤田:なるほど。じゃあまだまだこれから先があるわけですね。 佐藤:ミラノ勅令で、公認されたということによって徐々にシステムの側になっていくというところだけれども、まだ帝国の中で完全な認知は得られてないっていう、こういうところじゃないかと思うんです。 澤田:今からがさらに面白いですね。 佐藤:いろんな変化があると思いますよ。特に現実政治のことを考えた場合に、影響は大きい。例えば安倍政権のスタートのときと終わりの時で、実は変わってるところがあるんですよね。核廃絶に対する姿勢です。安倍さんは、ローマ教皇が来たときに、核廃絶を強調する演説をした。核廃絶に対する情熱がこの7年8カ月で変わりましたね。明らかに、公明党の影響があると思います。ナショナリズムが強まり、戦争の危機が強まってくる中において、戦争を阻止するという役割を、私は、創価学会に非常に期待しているんですよ。  裏返していうと、キリスト教は現実の中に自分たちの信仰を生かしていくというところが弱いんですよね。だから、私なんかも微力なところで、教育とか私の評論、あるいは創価学会を扱うということの背景の意図も含め、平和を維持したい、戦争を避けたいと、こういう思いがあるわけですよね。  他方、ロシアみたいな国をソ連時代から担当して、核抑止の論理は論理で、外交官としてわかるから、常に私の中に引き裂かれるような感じがあるんです。自分の理念と現実の間で。  それと同じで、池田大作氏のテキストにも、理念と現実の間で、引き裂かれるような状況をやっぱり感じるわけですね。その中で自分の言葉を紡いでいって、自分の宗教団体を主導していく。やっぱり、宗教って面白いなと思うわけですよね。 澤田:なるほど。 佐藤:それともう一つ。例えば『人間革命』や『新・人間革命』は創価学会の人たちは一生懸命読むんですけど、外部の人はほとんど読まないでしょう。 澤田:はい。読んだことないです。 佐藤:創価学会の人が読んでも違和感が無く、外部の人にもリーダブルな作品がない。だったら、自分で書くしかないなと思いました。 澤田:確かに、興味を持ったときにどこに行けばいいのかわからないというのはあります。ほかの宗教でもそうなんですけれど。私はキリスト教主義の学校で育ってきたから、キリスト教に関心を持ったときにどうすればいいかわかりますが、そうでなければどこから勉強すればいいかわかりづらいですよね。ただそもそも、なぜAERAでこれをやろうと思われたんですか。 佐藤:最初から書き下ろしたっていいのですけれども、週刊誌であるAERAでやると、当然反発もあります。そういう声を聞きたかったんです。結果的に、公式文献だけでやってるんだったら内在的な論理はわからないんじゃないかとか、学会を礼賛するためにやっているんじゃないかという批判はありましたけれど、テキストの中に入っての批判というのはなかったですね。 ■徹底的にテキストで池田氏の人生を読み解く 澤田:やっぱり、イメージ先行っていうのはあるんでしょうね。 佐藤:でも、創価学会について伝える本を中の人間は書きにくいでしょう。キリスト教のことを私が書くときに、非常に難しくなっちゃうのは、私が当たり前と思っていることが外の人にとっては当たり前じゃないから。こういうことがたくさん出てきちゃうんです。例えば、この本で扱った炭労事件を丁寧に書くっていうのは、学会員はあまり関心を持たなかったと思うんですね。 澤田:日本人は人間関係を円滑にするために、宗教や政治についてはあまり語らないという意識がありますよね。ですので、創価学会も存在は知っているけれど触らないほうがいい、みたいな印象論だけでずっときました。 佐藤:でも信仰は、即行為になる。 澤田:はい。生活に結び付いている。 佐藤:宗教というのはこの世の現実の問題を解決するもので、それを解決できない宗教はあの世の問題も解決できないんだっていう。これは本当にプロテスタンティズムに似てるんですよね。 澤田:でもこの本は、信仰的なことより、それこそ徹底的にテキストで、池田大作氏という個人の人生から読み解いていらっしゃる。日本人は、宗教というと、まずその信仰の内容だったり教義だったりに触れねばいけないっていう、何か一種の思い込みのようなことがあるのかなと感じました。 佐藤:教義はあとからついてくるものですからね。 澤田:キリスト教に関しても、キリスト教史が今のヨーロッパの世界史やアメリカの成立といったことと深く関わるわけで、それをしっかりと見ることと同義だと思うんですけど、なぜか我々は、宗教を見ようとするといきなり教義に飛ぶんですよね。 佐藤:アメリカのトランプ大統領を支持している宗教右派の言ってるところのキリスト教と、例えばドイツのメルケル首相の出してきているドイツ福音主義教会連盟のキリスト教と、あるいは南米のほうの解放の神学のキリスト教と、これらを同じキリスト教というアンブレラでくくれるわけじゃない。歴史の現実の流れの中で生まれてくる、それが宗教の力であり、良い面も悪い面もあるということなんです。 澤田:そういう意味では、この本は宗教のお話ではあるんですけど、日本の近代史でもあると思うんです。 佐藤:確かにその面はありますよね。だからこの本も、池田大作氏という人を通じた、戦後から令和に至るまでの「時代」を描いていると言えるでしょう。 (構成/編集部・木村恵子) 佐藤優(さとう・まさる)/作家・元外務省主任分析官。『創価学会と平和主義』『危機の正体』『ウイルスと内向の時代』『世界宗教の条件とは何か』など著書多数。2020年の菊池寛賞を受賞。 澤田瞳子(さわだ・とうこ)/作家。2010年、『孤鷹の天』でデビュー。『満つる月の如し 仏師・定朝』で新田次郎文学賞受賞。『若冲』『火定』『落花』『能楽ものがたり 稚児桜』で4度の直木賞候補に。 ※AERA 2020年11月16日号より抜粋
AERA 2020/11/13 08:02
創価学会とキリスト教に共通点? 「世界宗教化のプロセスが似ている」と佐藤優氏
創価学会とキリスト教に共通点? 「世界宗教化のプロセスが似ている」と佐藤優氏
佐藤優(さとう・まさる)/作家・元外務省主任分析官。『創価学会と平和主義』『危機の正体』『ウイルスと内向の時代』『世界宗教の条件とは何か』など著書多数。2020年の菊池寛賞を受賞(撮影/楠本涼) 澤田瞳子(さわだ・とうこ)/作家。2010年、『孤鷹の天』でデビュー。『満つる月の如し 仏師・定朝』で新田次郎文学賞受賞。『若冲』『火定』『落花』『能楽ものがたり 稚児桜』で4度の直木賞候補に(撮影/楠本涼)  作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏の、AERAでの連載を完全収録した書籍「池田大作研究 世界宗教への道を追う」が発売された。連載を振り返り、筆者の佐藤氏と作家の澤田瞳子氏が語り合った。AERA 2020年11月16日号の記事を紹介する。 *  *  * 佐藤:こんな長い本を読んでいただきまして、ありがとうございます。 澤田:知らないことだらけでした。読ませていただき、このテーマにずっと関心をお持ちだったんだなと感じました。 佐藤:結構長いんです。本格的にこのテーマに取り組んでから10年くらいになります。 澤田:池田大作氏の著作、多いじゃないですか。それを把握するだけでも大変でしょうに。 佐藤:そう。でもね、全集があるんですよ。『池田大作全集』全150巻。全集に収まっていないもので重要なのは、『新・人間革命』。これが30巻31冊。そのテキストをベースにすれば、大体のことはわかるんじゃないか、と。 澤田:なるほど。 佐藤:創価学会のことを書こうとなると、だいたいみなさんは、取材を中心にやっていこうとするんですね。そうすると、学会の中の人は話せることに限界があるし、やめた人の中には「恨み骨髄」みたいな感じの人もいる。だから、こういうときには大量の公式の文書をもとにしようと。私が外務省時代、ソ連やロシアの情勢を分析するときは、公開情報を中心に読んでいく「オープンソースインテリジェンス(公開情報諜報)」というやり方を使いました。それでやってみようと思ったんです。 澤田:歴史学においては、遠い時代ほどちゃんとしたテキストから分析でき、近い時代になればなるほど、いろんなことにゆがみが生じるのですが、それと一緒ですね。 佐藤:似ています。私の指導教授の一人で、藤代泰三先生(故人/歴史神学)という方がおられたんですけどね。この先生は、私がチェコスロバキアの社会主義国家と教会の関係を研究すると言ったら、「やめたほうがいい」と言うんです。新しすぎる、歴史記述というのは50年前でやめないといけない、本当は100年ぐらい前でやめたほうがいいかもしれない、と。そうじゃないと、その関係者が生存してるから、と言うんですね。 澤田:わかります。 佐藤:藤代先生は、お弟子さん、あるいは子どもとか孫とかが生存していると、そこへの配慮とかそこから入ってくる情報でゆがむんだとおっしゃるんですよね。しかし、私は言い返した。先生の本って10年前のことぐらいまで書いてあるじゃないですか、と。すると、「僕が現実への関心が強いので、それは僕の限界なんです」って、藤代先生はおっしゃられた。 澤田:なるほど。でも、人とか社会とか、すごく身近なものをやりたいと思えば思うほど、ちょっと遠い話に焦点を合わせたほうがいいというのは、逆説的ですけど、面白いですね。 ■世界宗教化のプロセス キリスト教と似ている 佐藤:この『池田大作研究』を出したことで、誰と対談をやりたいかとなったときに、僕は一番に澤田さんにお願いしたいと思ったんです。文学を専門とする人と対談したかった。創価学会が支持母体となっている公明党は与党の一角を握っているから、政治的な立場が濃厚な人だと、無意識的であれ意識的であれ、その立場が出ちゃうから、「テキスト」として読んでもらえないと思ったんです。 澤田:確かに。私は100%「テキスト」だと思って読みました。 佐藤:「テキスト外」のところで評価されてしまうと、創価学会におもねっているんじゃないかとか、逆に学会の外の人間である者がなんでこんなものを書くのかとか、いろんな意見が出てくると思う。そのときに、「テキスト」をしっかり読んでくれる人と話をしたいと、こう思ったんです。 澤田:佐藤さんは、本当に宗教的に興味があって、これを書かれたんだなというのが、よくよくわかりました。 佐藤:そうなんですよ。僕はキリスト教徒で宗教が違うがゆえに、創価学会員にとって大切なものがわかるわけです。我々、キリスト教徒にとっても大切なものがあり、そこを侮辱されるのは嫌です。それと同じことだなと。  創価学会が世界宗教化しているというのは本物なんだということも描きたかった。壁を破壊して、社会革命や政治革命を行うということじゃなくて、人間は変化する可能性があるから、壁の向こう側に価値観を共有する人材を作って送り出していく。そのプロセスが面白かったんですよ。キリスト教が世界宗教化していくときのプロセスに似てるなと思って。 澤田:そのお話、非常に興味深かったです。ある意味、ここで創価学会について述べ尽くされた感があるのかなと思ったのですが、明治前後に生まれたほかの日本の宗教、例えば大本(おおもと)や天理教には、関心は持たれないんですか。 佐藤:大本に関しては、高橋和巳さんがこの教団をモデルにして『邪宗門』という大きな古典的な作品を作られているから、たぶんそれを超えるような仕事ってできないと思うんですよ。そして、天理教も大本も、世界宗教的かどうかというところで、創価学会とは違いますね。その広がりがあるかどうかということ。 澤田:第2次世界大戦までは、これらの宗教はよく似た場所に立っていたけれど、そのあとが随分変わってきたなというふうに思いました。 佐藤:そうなんですよね。創価学会は、池田大作という人が、牧口常三郎(まきぐち つねさぶろう)と戸田城聖(とだ じょうせい)の遺産を継承して、解釈し、行動していく過程で変わっていったと思います。そして、本来は出身母体であったはずの日蓮正宗とも大戦争になった。世界宗教になる上で、自分たちの母体から抜け出していかないといけないというのは、私には、ユダヤ教からスタートして、ユダヤ教から抜け出していかざるを得なくなったキリスト教と酷似していると思いました。ただ、論壇にはある種の創価学会タブーがあるでしょう? 澤田:まず、宗教団体として大きく、そして政治に結び付いているように見える。この2点でほかの宗教団体と違うのかもしれません。 佐藤:ただ、神社本庁だって、政治と結び付いているわけですよね。 澤田:ええ。個人的な感覚でいうと、池田大作さんというご存命の方と、宗教、その信仰的なことが結び付いているという点が、特別に見えるのかもしれません。 佐藤:なるほど。僕は既成宗教と新宗教を分けて、新宗教だからいかがわしいみたいに思うっていうのは嫌いなんです。キリスト教も、スタートは新宗教ですから。そういうところに偏見を持ってはいけないと思うんですよね。  ただ、なぜここまでの力が創価学会にあるのかというところに関心が強かった。戦時下の創価教育学会(創価学会の前身)っていうのは、国と非常に距離があって、弾圧された。その結果、創価学会初代会長の牧口常三郎は獄中死しています。そこからのスタートだから、「おのれ権力」という発想になるはずで、ある時期まではそうだった。それが途中からは、ただ反体制ではなく、むしろ体制化していく。ただし、体制に取り込まれてしまったわけではない。その部分が面白かったんです。キリスト教に似ています。 ■発展して変化しよう その意思が内側にある 澤田:そういうところも含めて、実は創価学会って非常にフラットだと、この本を拝読して知りました。いつまでも恨むとか、そういうことを引きずらないというのを、まさに体現しているのかなとも思いました。 佐藤:僕もそう思うんですよね。今回の組閣で考えてみても、(小選挙区で2度も公明党の山口那津男氏を破った)平沢勝栄さんが自公連立政権の閣僚で入ってるっていうのは、ある意味びっくりしました。別に、まあ過去は過去だと。本人もまずかったなと思ってるんだから、いいんじゃないでしょうかぐらいの感じですからね。  それから、この本で扱った中で面白かったと思うのが、藤原弘達さんです。藤原弘達という人が、創価学会や田中角栄の圧力に屈せず、言論を守った人だって言われてきたんだけれども、実は去年出版された志垣民郎さんの『内閣調査室秘録』の中において、藤原さんが内調との関係が非常に密接だったということが出てきました。  私自身、過去にやってきた仕事と合わせて、皮膚感覚でわかるんですよ。なるほど、こういうことって国家ってやるからな、と。だから、あのときの創価学会の力は国家にとって相当の脅威だったわけですね。 澤田:国家にとって創価学会は、あんまり経験したことのない団体だと思うんですよね。 佐藤:そう思います。創価学会の面白さや謎というのはそこなんです。今でも創価学会って、国家もよくわからないところがあると思う。それはやっぱり、宗教と政治っていうものが重なるところもあれば、重ならないところもあるということ。  それから、創価学会もいま過渡期にきている。2014年という年が、実は創価学会にとってすごく大きい年だったと僕は思うんですよ。一つは、公明党の結党50年で、再び池田大作氏の名前と顔が出てきた。これ、唐突なんです。それまで出てこなくて。公明党の50年党史で突然出てくるんです。  それと同時に、教義条項の改正というのがあって、大石寺(たいせきじ)にある本尊との関係を断ち切るということをやったんですよね。翌年に、この教義条項をどういうふうに読むかっていうことで、江戸時代に日寛という非常に重要な指導者がいたんですが、この「日寛教学」の見直しに入る。それから「勤行要典(ごんぎょうようてん)」という、彼らが朝晩祈念する文章の中に、牧口常三郎、戸田城聖、池田大作っていう3人の名前が入った。そしてそのあと、創価学会の憲法に相当する「会憲」を作り、創価学会インタナショナル(SGI)のネットワークとしての位置付けを整備する。その基点が2014年だと私は見ています。  それとともに、公明党の人が創価学会の話をするようになってきた。創価学会の人も、政治の話をストレートにするようになりました。それまでは、公明党の会合に行くと創価学会のことは言わない。池田大作氏のことは言わない。政教分離を徹底するんだっていうのがありました。実は、政教分離というのは、国家が特定の宗教を優遇したり忌避したりすることを禁じるもので、宗教の側から政治に関与することは構わないんだけれども、創価学会も、言論問題以降、過剰に抑制しているところがあった。それがオープンになってきたっていうのも面白いなと。 澤田:確固たる宗教を持たない一般的日本人からすると、宗教とは既にでき上がっているもので、教義も今から変わるものではないと感じがちなのですが、今のお話を伺うと、いまだに変わり続けて、発展して変化していこうという意思が内側にある。面白いですね。 佐藤:面白いと思います。変わらないために変わるというところがあるわけですよね。この本の最後は会憲でまとめたんですけれど、その意味において、この会憲で創価学会は宗教として完成したと僕は見てるんですよ。 澤田:私、最初に面白いと思った歴史小説ってヘンリク・シェンキェヴィチの『クォ・ヴァディス』なんです。宗教が人間の歴史の中で変化していって、今につながっていくという点が、読んでいてすごく面白かったんですけれど、そういった視点でもこの『池田大作研究』を読みました。まさにキリスト教がずっとやってきたことが、第2次世界大戦中から今までの間に、ぐっとまとまって、この一冊に詰まっている。人間の歴史は幾度も幾度も同じことが重なっていくものです。だからこの先も、またどういうふうに変わっていくのかなと思いました。創価学会は完成したとおっしゃいましたけれど、キリスト教だって、いつでも改革はあります。 佐藤:それは変わっていきます。一つのベースができて、その土俵の上で変わっていくということです。 (構成/編集部・木村恵子) 佐藤優(さとう・まさる)/作家・元外務省主任分析官。『創価学会と平和主義』『危機の正体』『ウイルスと内向の時代』『世界宗教の条件とは何か』など著書多数。2020年の菊池寛賞を受賞。 澤田瞳子(さわだ・とうこ)/作家。2010年、『孤鷹の天』でデビュー。『満つる月の如し 仏師・定朝』で新田次郎文学賞受賞。『若冲』『火定』『落花』『能楽ものがたり 稚児桜』で4度の直木賞候補に。 ※AERA 2020年11月16日号より抜粋
AERA 2020/11/12 08:02
木村拓哉さんがAERA表紙に登場!蜷川実花さん撮り下ろし 人気漫画「あたしンち」の連載も開始!
木村拓哉さんがAERA表紙に登場!蜷川実花さん撮り下ろし 人気漫画「あたしンち」の連載も開始!
AERA12月30日-1月6日合併号 ※アマゾンで予約受付中!  12月23日発売のAERA 12月30日-1月6日合併号の表紙に、木村拓哉さんが登場します。1月4日、5日に主演するフジテレビ開局60年特別企画ドラマ「教場」の放送を、1月8日にはソロアルバム「Go with the Flow」の発売を控え、分刻みのスケジュールの中で実現した撮影とインタビュー。表紙と1ページコラム「表紙の人」はもちろん、カラーグラビアにも5ページを割き、写真もお話もたっぷり収録しました。撮影はもちろん蜷川実花です。この号の巻頭特集は「親孝行2020――実家と親の不安をデジタルで解消」。作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏による書き下ろし新連載「池田大作研究――世界宗教への道を追う」がスタートするほか、けらえいこ氏による人気漫画「あたしンち」の連載も始まります。  12月初旬、都内某スタジオ。今回の表紙撮影のため蜷川実花が用意したセットは二つ。ショッキングピンクの背景にグリーンの光が差し込むセット。そして、ブルーとピンクの光がオーロラのように差し込むセットでした。スタジオに現れた木村拓哉さんはほんの少しだけ立ち止まり、二つのセットを確認すると、次の瞬間にはスッとその中に立ち、1度目のシャッターですでに、そのまま表紙にできる一枚が撮れていました。  1月4日、5日に放送されるフジテレビ開局60年特別企画ドラマ「教場」で演じたのは、警察学校の冷徹な教官・風間。自分が本当にいいと思ったものではなくても、周囲の反応を読んで「いいね!」ばかりが乱発される世の中にあって、「いいね!」したという行為の意味をとことん問う人物が風間だ、と木村さんは言います。ここからインタビューは、「木村さんにとっての風間は誰か」という話に及び、名前が挙がったのは1989年の舞台で向き合った演出家の故・蜷川幸雄さんと、19年になくなったジャニーズ事務所の創設者、ジャニー喜多川さん。彼らがいったいどんな風に、「いまの木村拓哉」に影響を及ぼしているのか。彼らに対していま、何を思うのか。木村さんはクリアに、説得力をもって語っています。  巻頭特集は「親孝行2020――実家と親の不安をデジタルで解消」。水や米の買い物に困っていないか。転んで動けなくなっていないか。遠く離れていればもちろん、近くに住んでいても老親の心配はつきません。そんな子ども世代の不安を解消し、親の生きがい作りにもつながる「デジタル化」。年末年始の休みを利用してできる「デジタル親孝行」を提案しています。近い将来、実用化される「アバターロボット」を体験したり、ガラケーからスマホへの移行を成功させるコツや月額500円からの「見守りサービス」を厳選してご紹介したり。この特集に沿って「デジタル化」を進めるうちに、親子のコミュニケーションも深まります。  この号では、二つの新連載も始まっています。 一つは佐藤優さんが書き下ろす「池田大作研究―世界宗教への道を追う」。8月末まで35回を費やして、創価学会トップの人物像に迫ります。そしてもう一つは、けらえいこさんの漫画「あたしンち」。読売新聞での連載が2012年に終了して以来7年ぶりの復活に、ファンから「待ってましたー」の声が続々と届いています。大ざっぱなお母さんと高校生のみかんを中心に、タチバナ家の日常をユーモラスに描きます。読めば共感すること間違いなし。ご期待ください。 ほかにも、 ・部活顧問のセクハラ・パワハラも泣き寝入りしない ・伊藤詩織さん「民事で勝訴」なのに刑事は不起訴の違和感 ・車いすテニス 国枝慎吾 東京でリオの雪辱に挑む ・パラアーチェリー 岡崎愛子 JR宝塚線事故から生還「人生を楽しみたい」 ・森田 剛が語る仕事と日常「些細な幸せがいい」 ・記述式も英語民間試験もなくなって「20年度入試」はどうなる ・獣神サンダー・ライガー 引退試合を味わい尽くす ・現代の肖像 プロレスラー オカダ・カズチカ などの記事を掲載しています。 【概要】 AERA(アエラ) 2019年12月30日-2020年1月6日合併号 定価430円  発売日:2019年12月23日(月曜日)
dot. 2019/12/20 12:13
集団的自衛権を骨抜きにした「創価学会の平和主義」とは
集団的自衛権を骨抜きにした「創価学会の平和主義」とは
 集団的自衛権を巡るマスメディアの議論の中で、連立与党である公明党に対する手厳しい意見があった。行使容認を推し進める自民党の主張に、大幅に譲歩した公明党は、本来の党是である「平和」の看板を下ろしたのではないか、というものだ。  たとえば6月28日の毎日新聞社説は、以下のような論調だ。 <海外での武力行使へ歯止めをかけられない内容の閣議決定案の受け入れはこれまで培った「平和の党」の党是にもとる。9条の根幹維持よりも自民党との連立を優先した判断と言わざるを得ない>  こうした公明党に対する批判的な意見は、集団的自衛権行使容認に反対するメディアだけでなく、野党の政治家からも飛び交った。  元外務省主任分析官で書籍『創価学会と平和主義』(朝日新書)の著者・佐藤優氏は、同書の中でこうした公明党批判を一蹴している。 「はたして、公明党の『平和主義』は偽物なのか? 私の結論を先に言えば、『公明党の平和主義は本物である。それは創価学会の平和主義が本物だからだ』ということに尽きる」  かくいう佐藤氏は、創価学会員ではない。同書の中でも繰り返し言及しているが、彼はプロテスタントのキリスト教徒。大学1年生のクリスマス礼拝で洗礼を受けた19歳のときから、キリスト教信仰が揺らいだことは「一度もない」という。  そんな佐藤氏は、多くの日本人に対して「公明党や創価学会という言葉を聞いた瞬間に思考停止してしまう人が多い」と指摘する。たしかに公明党や創価学会に関する話となると、ある種の固定観念で見てしまう傾向は強い。佐藤氏は、公明党に対して固定観念を持っているならば、いったんそれを外し、異なる視座から見つめる必要があると語る。 「とくに今回の閣議決定について考える際、公明党に対して固定観念を持ったままでは、閣議決定で位置づけられた集団的自衛権の真の姿を見誤ってしまう」(同書より)  佐藤氏が言う「閣議決定で位置づけられた集団的自衛権の真の姿」とはなんだろうか。  それは、公明党がブレーキ役として閣議決定の内容を“骨抜き”にし、その閣議決定により、むしろ集団的自衛権による自衛隊の海外派兵は遠のいた、ということだ。「外交実務を経験した人間でなければ読み解きが難しい部分がいくつもある」という閣議決定の全文を繰り返し読んだ結果、佐藤氏はそう断言している。つまり、集団的自衛権を行使しようにも、閣議決定の内容では「縛り」があちらこちらにあるため、現実的にはできない、というのだ。  もちろんその「縛り」が本当に機能するかどうか、疑いを持つ人も多いだろう。同書では、その縛りがいかに有効か、また、どのようにして公明党が集団的自衛権を骨抜きにしたのかを詳しく解説している。さらに、同書では長年議論され続けている、公明党と創価学会の政教一致問題についても切り込んでいる。信仰の対象が違うとはいえ信仰心の篤い著者だからこそ紐解ける組織の論理と思想。“等身大の創価学会”を分析した最適な解説書と言えよう。
2014衆院選安倍政権朝日新聞出版の本集団的自衛権
dot. 2014/11/23 07:00
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