書評『戦後ゼロ年 東京ブラックホール』貴志謙介著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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《話題の新刊 (週刊朝日)》

戦後ゼロ年 東京ブラックホール 貴志謙介著

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内山菜生子書評#話題の新刊

 日本の戦後は大転換劇として語られる。焼け野原から奇跡の復興を成し遂げ、天皇は神から人間になり、民主主義が根付いた。1945年を境に国の姿はがらりと変わった。この物語から、戦後ゼロ年=終戦直後の記憶が抜け落ちている、と著者は指摘する。

 焦土と化した東京にはブラックホールさながらの混沌が広がった。庶民が食べる物にも事欠く中、戦時に接収された大量の土地や物資は権力者が奪い合った。ヤミ市の利益はやくざ者が吸い上げ、東京裁判で重罪を免れた政治家とGHQとの間を取り持つフィクサー役にもなった。これらの実態を権力側が巧妙に隠してきたという。

 NHKのディレクターだった著者が膨大な資料を読み解いて編み上げた労作。現代にも痕跡が残るという戦後の暗黒面を、立体的に浮かび上がらせる。

週刊朝日  2018年12月7日号


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