「一発屋」の響きには哀愁が漂う。「突然のブレイクと悲惨な今」と考えてしまうからかもしれないが、本書は見事に印象を変えてくれる。

 例えば、彼らの多くは芸の研鑽に励み、緻密に計算して売れるべくして売れた。レイザーラモンHGは「ハードゲイ」でブレイクする前にニューハーフパブで働き、ゲイの所作を学んだ。キャラ作りに際し、芸能界の「おネエ」系に挨拶するなど準備も欠かさなかった。仕事が減っても、再び輝く場を得た者もいる。「なんでだろう~」のテツandトモは今や地方営業に大忙しだが、入念な取材でネタにご当地話を盛り込む。著者も漫才コンビの髭男爵で「ルネッサーンス」のかけ声で注目を集めた「一発屋」。取材者と近すぎず遠すぎずの距離感で織りなす文章が彼らの等身大の姿を浮き彫りにする。

週刊朝日  2018年7月27日号