このあと どうしちゃおう

ベストセラー解読

2016/06/02 11:30

 死んだおじいちゃんが遺したノート。そこには、死んだあとの予定や、神様へのリクエスト、天国の予想図などが書かれていた……。ヨシタケシンスケの絵本『このあと どうしちゃおう』である。
 エンディングノートといえば、終末医療や葬儀についての希望、遺産相続についての指示など、とかく堅いものになりがちだ。でもこのおじいちゃんのノートは愉快。「てんごくにいくときのかっこう」や「うまれかわったらなりたいもの」など、死んだあとの夢が語られている。「いじわるなアイツはきっとこんなじごくにいく」には大笑いしてしまう。地獄の制服はチクチクして着心地が悪く、靴はきつくていつも小石が入っているらしい。
 ノートを読んだ「ぼく」は考える。おじいちゃんは死ぬのが楽しみだったのか? もしかしたら逆で、ほんとうは寂しくて、怖かったのかもしれない。そして、自分もノートを買って、書きはじめる。
 この絵本のテーマは死。センチメンタルでも荘厳でもなく、ごく普通の日常の延長で考えている。本に挟み込んだパンフレットに、著者のインタビューがある。
「死は茶化しちゃいけないっていうムードがあるけど、世の中ふざけながらじゃないと話しあえないこともたくさんある」とヨシタケはいう。
 本書は『りんごかもしれない』『ぼくのニセモノをつくるには』につづく、「発想えほん」の第3弾だ。
 見慣れた風景も、ほんの少し角度を変えたり、別の要素を加えることで、まるで違ったものに見えてくる。子どもだけでなく、大人、それも老人におすすめしたい絵本だ。

週刊朝日 2016年6月10日号

このあと どうしちゃおう

ヨシタケシンスケ著

amazon
このあと どうしちゃおう

あわせて読みたい

  • “令和の絵本”は恋にLGBT、マネーも! 背景にあるのは?

    “令和の絵本”は恋にLGBT、マネーも! 背景にあるのは?

    週刊朝日

    6/12

    ヨシタケシンスケが語る絵本づくりの“ルール”とは 「大人が言いそうなことからできるだけ距離をとる」

    ヨシタケシンスケが語る絵本づくりの“ルール”とは 「大人が言いそうなことからできるだけ距離をとる」

    dot.

    3/28

  • 大人もニヤニヤが止まらない! ヨシタケシンスケさんの絵本の世界

    大人もニヤニヤが止まらない! ヨシタケシンスケさんの絵本の世界

    AERA

    7/17

    「子どもの興味」どう見つけて伸ばす? 絵本作家・ヨシタケシンスケ×法学者・木村草太

    「子どもの興味」どう見つけて伸ばす? 絵本作家・ヨシタケシンスケ×法学者・木村草太

    週刊朝日

    6/13

  • 山崎ナオコーラ×ヨシタケシンスケ 親になって感じた「大人ってすごい」

    山崎ナオコーラ×ヨシタケシンスケ 親になって感じた「大人ってすごい」

    AERA

    8/27

別の視点で考える

特集をすべて見る

この人と一緒に考える

コラムをすべて見る

カテゴリから探す