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最後の祝宴
話題の新刊
2015/10/01 11:26
うろんな概念に切り込んでいく挑戦的な作風と、深い知性に裏付けられた強烈な風刺、どこまでも優雅で端正な文体──死後10年経った今も熱狂的なファンを擁する作家・倉橋由美子の単行本未収録テキストに加え、自作解題ともいうべき「作品ノート」を一冊に集成。貴重な小説論の数々から、読み巧者としての側面がうかがえる書評群、生活者の立場から書かれたエッセイ群まで、彼女の言葉のたたずまいが立体的に浮かびあがる優れた構成になっている。
文壇を賑わせた、評論家・江藤淳との丁々発止のやりとりはもちろん、どの文章も実に刺激的。そして純粋に面白い。孤高と称される機会も多い作家だが、筆先から伝わってくるのはユーモアとサービス精神だ。物事を理知的に論じつつも、それが「読み物」であること、つまり書かれたものの対岸には必ず「読者」がいるという点を常に意識している。
「文章を書く人間はまず言葉で他人を縛ることに努めるはずで、そのために言葉を正確に使おうとすれば自分も言葉に縛られる」──その透徹した精神はけっして古びない。
※週刊朝日 2015年10月9日号
最後の祝宴
倉橋由美子著


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