書評『組長の娘 中川茂代の人生』廣末登著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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《話題の新刊 (週刊朝日)》

組長の娘 中川茂代の人生 廣末登著

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松岡瑛理書評#話題の新刊

 本書は、刑務所での服役歴を持つ大阪在住の女性のライフヒストリーである。著者である犯罪社会学者が行った聞き取り調査が基になっているが、あえて学術的な議論には踏み込まず、彼女自身の語りを中心に構成されている。
 自らの経験は「そんな珍しいもんちゃうで」と断ったうえで、非行の世界に足を踏み入れてから刑務所に服役し、釈放に至るまでの人生が関西弁のリズムで語られる。「ごっつう幸せ」な結婚生活であったにもかかわらず不倫を経て覚醒剤に手を染めてしまった過去、刑務所内の悲喜こもごもの生活、釈放後「真人間」に戻ろうとするも、「過去の亡霊」(非行時代の仲間)が次々と自宅を訪れるなど、一筋縄ではいかないその生きざまに引き込まれずにはいられない。
 現在はかつての仲間たちの社会復帰を手助けする彼女だが、それを「支援」と見る著者に対し、本人はあくまで「持ちつ持たれつの関係」と否定。研究者が一方的な解釈を行うのではなく、当事者世界のリアリティを尊重し、その魅力をよりよく伝える一冊だ。

週刊朝日 2015年9月4日号


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