知の格闘──掟破りの政治学講義

話題の新刊

2014/02/26 17:14

 本誌の恒例企画「国会通信簿」でおなじみの著者が、東大先端研の教授を退官する際の“最終講義集”。2011~12年にかけて「オーラル・ヒストリー」「公共政策」「メディアと政治」など6回にわたり、古今の政治を縦横に語り尽くしている。
 どの回も裏話がとにかく面白い。宮沢喜一元首相が、いかに嫌みな振る舞いを得意としていたか。栄典制度見直しの懇談会委員として答申書を提出した際、小泉純一郎元首相が発した一言。他の学者委員との角逐もまた、通常ではうかがえない政治の裏面だ。菅内閣の震災復興構想会議で議長代理を務めたが、「(他のメンバーと)もし同窓会をやって酒を飲んだら、皆を並べておいて全員を殴打するだろう」と血なまぐさい宣言までしている。
「建築と政治」では、首相官邸や別邸など、物言わぬ「権力の館」が発する政治的メッセージを読み解く。麻生太郎元首相がなぜバーに通ったか、公邸の間取りから解を導き出す。
 講義を通じ、結局政治は人の織り成すドラマであることがわかる。政治学入門書としても最適だ。

週刊朝日 2014年3月7日号

知の格闘──掟破りの政治学講義

御厨貴著

amazon
知の格闘──掟破りの政治学講義

あわせて読みたい

別の視点で考える

特集をすべて見る

この人と一緒に考える

コラムをすべて見る

カテゴリから探す