書評『漂流遊女 路地裏の風俗に生きた11人の女たち』中山美里著 |AERA dot. (アエラドット)

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《話題の新刊 (週刊朝日)》

漂流遊女 路地裏の風俗に生きた11人の女たち 中山美里著

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江田晃一#話題の新刊

 1時間当たり2千~3千円で体を売る女性がいる。風俗業界でも最底辺に位置するが、本書に登場するのは、そうした風俗ですら客が掴めない女性たちが大半だ。
 立ちんぼで生活する元派遣OL、自宅でデリヘルを営む2児の母。食費を稼ぐのにも苦労する元AV嬢。生い立ちや環境は異なるが、彼女たちの口から共通して出てくるのは「自己肯定」だ。店が悪い、客が悪いと愚痴をこぼすが自己の境遇は悲観しない。自らよりも惨めな存在を探しては安堵する。
 数少ない成功者も登場する。39歳で年収は1千万円。顧客の好みをノートに記し、コミュニケーションを欠かさない。風俗以外の世界でも成功する普遍の要素をそこには見いだすことが出来る。
 別世界に映るかもしれないが、彼女たちの人生は我々と陸続きの地平にある。私たちの多くも彼女たち同様、幼少時に夢見た人生とは大きく異なる道を歩んでいる。意図せずしておかれた状況を「仕方ない」とただただ受け止めていないか。敬遠しがちなタイトルだが、示唆に富んだ一冊だ。

週刊朝日 2013年9月20日号


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