書評『永続敗戦論 戦後日本の核心』白井聡著 |AERA dot. (アエラドット)

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《ベストセラー解読 (週刊朝日)》

永続敗戦論 戦後日本の核心 白井聡著

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長薗安浩#ベストセラー解読

敗戦がなかったように主張する国の未来

 安倍首相が「戦後レジームからの脱却」を自身の政治方針として語ったとき、この人は米国とまた戦争をするつもりなのか、と私は驚いた。米国が日本の戦後レジームの基盤をつくった以上、そこから脱却しようとすれば、同国との間にただならぬ軋轢(あつれき)が生じるのは必然と考えたからだ。
 勇ましい首相の姿勢は、たとえば今年4月、村山談話の継承を否定する国会発言にも現れた。アジア諸国への侵略を認めた談話の継承拒否。この発言に対し、中国、韓国政府が反発することは首相も予測していただろうが、米国から批判が噴出するとほどなく、村山談話を継承すると国会で明言した。
 この一例の経緯を見ても、日本の戦後は米国の態度とともに揺れ動く。戦後30余年がたって生まれた社会思想・政治学の研究者、白井聡はこの本で、日本の曖昧な戦後を「永続敗戦」ととらえている。タイトルにもある永続敗戦とは、〈敗戦を否認しているがゆえに、際限のない対米従属を続けなければならず、深い対米従属を続けている限り、敗戦を否認し続けることができる〉状況を意味する。
 戦後の繁栄と平和を誇り、まるで敗戦などなかったようにアジア諸国に対して排外的ナショナリズムを主張する日本。その背後に米国の圧倒的な軍事力があることを私たちは知っている。そこをふまえて白井は書いている。
〈日本が「東洋の孤児」であり続けても一向にかまわないという甘えきった意識が深ければ深いほど、それだけ庇護者としての米国との関係は密接でなければならず、そのために果てはどのような不条理な要求であっても米国の言い分とあれば呑まなければならない、という結論が論理必然的に出てくる〉
 戦後レジームの根幹をなす永続敗戦の実状を直視し、認識の上で終わらせるよう訴える白井。私は彼の主張に強い共感を覚えながら、今後のTPPの展開に不安を募らせている。

週刊朝日 2013年7月19日号


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