書評『「余命3カ月」のウソ』近藤誠著 |AERA dot. (アエラドット)

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《新書の小径 (週刊朝日)》

「余命3カ月」のウソ 近藤誠著

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青木るえか#がん#新書の小径

放射線科医の必死の訴え

 最近やたら近藤さんの本が出ているように思えるのですが、がん界に何かあったんだろうか。まあ、個人的に、近藤さんの新刊がたくさん出ているのはありがたい。
 というのも、昨年暮れに生まれてはじめての人間ドックってものをやりまして、その後数カ月、体調が激悪となり、ほとほと疲れ果てたからです。子宮がん検診の内診のあとはいつまでもダラダラ痛みと出血が続き、バリウムを飲んでからずっとあの味が何かの拍子によみがえってムカムカした。これを毎年やるなんてはっきりと恐怖ですよ、人間ドック。
 そんな時に近藤さんの本を読むと「もう行かなくていいんだー!」と叫べる。人間ドックで早期がんとかを発見できるかもしれないのでツラくてもやらないといけないかなあ……と弱気になっていたが、こうやって近藤さんがお墨付きをくれれば大声で叫べますとも! 「人間ドックはもう行かん!」。いえ、近藤さんが「人間ドック禁令」を出しているわけではないのです。もっと緻密な話をなさっている。マンモグラフィーは意味無しとか(私はマンモはそれほど苦でなかったので、これはちょっと残念)。本の眼目は「ほとんど自覚症状がなかったのにいきなり余命宣告された挙げ句、手術だ、抗がん剤だとやられて死んでしまう悲劇」をなくしたい、ということだ。そこには、放射線科医として長年がん治療の最前線にある近藤さんの、必死の訴えがある。
 しかし、私みたいなだらけた人間には福音書みたいに読めてしまう。ちょっと太り気味のほうが実は長生きするとか、ツラい治療なんかいいことは一つもないとか、大人として耐えねばならない「養生や治療」なんかガマンしてやることない、と思えるからだ。最後に、がんになっても治療しないほうがいいという話を、つい「がんを治療しないと、がんにならない人よりも長生きする」ような錯覚をしてしまうが、やはりがんだと数年で死んだりするので、がんにはかからないに越したことはない。

週刊朝日 2013年6月7日号


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