ニューヨークのペン・ステーションの片隅に設けられたワクチン会場(撮影・新垣謙太郎)
ニューヨークのペン・ステーションの片隅に設けられたワクチン会場(撮影・新垣謙太郎)

かつてアメリカにおける新型コロナ感染爆発の中心地と言われたニューヨークだが、感染拡大から一年以上が経ち、街中では多くの地元住民や観光客も見られるようになった。市の中心部ではコロナ禍で閉店を余儀なくされたレストランや小売店も未だに目立つが、街の活気は徐々に戻りつつある。そして際立って目を引くのは、無料で受けられるワクチンを求めて海外から訪れる観光客の姿である。「ワクチンツーリズム」に湧くニューヨークの現状を、現地のジャーナリストがルポした。

【写真】NYでワクチン接種した後、配られる証明はこちら

「ニューヨークは両手を広げて、海外からの観光客を歓迎します」

 ニューヨーク州(以下はNY州)が全米で最もコロナ陽性率の低い州となったことを受けて、アンドリュー・クオモ知事は6月2日の会見で呼びかけた。15日にはNY州における18歳以上の成人7割が少なくとも1回のワクチン接種を受けたと発表し、知事は屋内における人数制限などほぼすべてのコロナ規制の即時解除を決定した。筆者の身の回りを見ても、以前の日常生活が少しずつはあるが戻ってきていると実感している。

 その大きな理由として、ワクチン接種が広まったことが挙げられる。数ヶ月ほど前から、市内のいたるところでワクチン接種をすすめるテントや車両型のワクチン接種所、いわゆる「ワクチン・バス」などを見かけるようになった。さらに、多くの通勤客が利用する主要な駅においても、予約なしに無料で受けられるワクチン会場が登場した。その会場の一つ、「ペン・ステーション」に筆者は足を運んでみた。

 訪れたのは週末であったが、駅の構内の一角に設けられた簡易テントのワクチン開場前には10人程度の人々が列を作って並んでいた。ワクチン接種を終えた一人に話を聞いてみた。

 韓国人のパク・チョンウォンさん(24)によると、受付からワクチン接種を終えて出てくるまでに20分程度もかからなかったという。現在メキシコ在住のパクさんは、ESTA(エスタ=電子渡航認証システム)を使ってアメリカに入国。翌日ペン・ステーションに、早速ワクチンを受けに来た。

ペン・ステーションでワクチンを接種した韓国人のパク・チョンウォンさん(左)(撮影・新垣謙太郎)
ペン・ステーションでワクチンを接種した韓国人のパク・チョンウォンさん(左)(撮影・新垣謙太郎)
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