家族3人でワクチン接種を行ったメキシコからの観光客左から父親のアレックスさん、中・母親のガブリエラさん、右・息子のパトリシオさん(撮影・新垣謙太郎)
家族3人でワクチン接種を行ったメキシコからの観光客左から父親のアレックスさん、中・母親のガブリエラさん、右・息子のパトリシオさん(撮影・新垣謙太郎)

観光客にワクチンを接種するのは、コロナ禍で失われた観光業を盛り返すという目的以外にも、余剰ワクチンの問題もありそうだ。

 しかし、ワクチン接種がまだまだ行き届いていない国から見れば、うらやましい状況である。

 メキシコ人のパトリシオ・ガルシアさん(18)は、40代の両親と一緒に初めてニューヨークを訪れたという。ワクチン会場近くのホテルに滞在しており、ニュースでこの会場のことを知り、家族3人でワクチンを接種しに来たと話した。メキシコでは自分たちのような若者がワクチンを受ける事ができるのはかなり先のことだろうと考え、今回両親と一緒にワクチンを接種することにしたと語った。

「メキシコにおける(ワクチン接種の)状況は、非常に時間がかかっています。自分みたいな若者にとって、今は(接種するのが)不可能です」

 父親のアレックスさん(45)によると、昨年、家族旅行でニューヨークに来る予定だったが、コロナ禍の影響でキャンセルに。今年は少し早めの夏休みを取って、こちらで休暇を過ごしながら、ワクチン接種も受けることにしたという。ニューヨークには11日間の滞在予定だが、家族3人で飛行機代やホテル代なども含めると1万ドル(約110万円)以上はかかるとみている。

「ニューヨークのすべてを見てみたいですね。非常に滞在が楽しみです」

 アレックスさんは誇らしげに腕のワクチン接種の跡をみせ、大きく微笑んだ。

NYでワクチンを接種したと知らせるシール(撮影・新垣謙太郎)
NYでワクチンを接種したと知らせるシール(撮影・新垣謙太郎)

(取材と文=新垣謙太郎)