広末涼子さん
広末涼子さん
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作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、広末涼子さんの不倫報道を受けて夫キャンドル・ジュンさんが開いた記者会見について。

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 たまにではあるが大きなステージでスピーチをするとき、強いスポットライトを浴びることがある。私はそれが怖い。強いライトを正面から受けると何も見えなくなるからだ。光の中にいるのに闇、という気分になる。

 超有名人とは、そんな闇の中に常におかれる人なのかもしれない。数年前、東方神起の東京ドーム公演で、100メートル先からでも肌の質がわかるほどの強いライトを浴びるユノ(私の推しです)が1人で歌っているとき、ユノは今、暗闇で歌っているのだと急にせつなくなった(推し活中は涙もろいです)。強烈な白い光の中、数万のファンに笑顔を見せながら、自分は全てを晒されているにもかかわらず、本人には何も見えていない。その恐怖に耐えられる人しか、スターとして生き続けるのは難しいのだと思う。

 物理的なことではなく、心理的な面でも同じかもしれない。脚光を浴びれば浴びるほど、その光は逆光となり視界は暗くなっていく。ときおり全ての栄光を手にしたかのように見える芸能人が奇行を繰り返したり、破滅的な行動をしたり、または残酷にも自死を選んでしまったりするニュースに触れると、この人は一般人には見えない闇の中を綱渡りして生きてきたのだろうと、どうしたって同情するしかない。

 だいたい日本社会は、あり得ないほどに女性芸能人に厳しい(一般人女にも等しく厳しいですけどね)。

 今、世間は広末涼子さんの記事一色だ。彼女の過去の“奇行”などが面白おかしく騒がれてもいるが、10代でとんでもないスケールで成功した女の子たちが、順調に成熟したキャリアを積むことがどれほど難しいかを、現実として私たちは目の当たりにしてきている。

 同じように10代で日本全国誰もが知る有名人になった宮沢りえさんにしても、報じられ続けてきたその人生は、決して順風満帆ではなかったように見える。大人たちが決めた「消費期限」を最大限に活用するように18歳でヌード写真集を出版し、大人たちに莫大な富をもたらしてあげ、まだまだ幼い表情で婚約記者会見を行った後の破局、その後、「激やせ」などの報道から伺える苦悩のなか俳優としてのキャリアを積んでいく姿を、私たちはリアルタイムで見続けてきた。宮沢りえさんと同世代の後藤久美子さんの騒がれ方もすごかったが、自分を守るためには外国で暮らし、日本の芸能界から距離を保つというのが正解なのではないかと思うほどに、「若さ」「美」で一世を風靡し大人たちのビジネスに巻き込まれていく少女が、その地位を保ちながら成熟していくことの厳しさには言葉を失う思いになる。それはもう「犠牲者」と言っていいと私は思う。たくさんの「犠牲者」を私たちは見てきた。

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広末さんは過去の自身を率直に語っていた