「詰め込み」「偏差値」というイメージが強い中学受験。「受験のための勉強は子どもの将来に役に立つの?」「難易度より、子どもを伸ばしてくれる学校を選びたい」といった悩みを抱えている親御さんも増えています。思い切って「偏差値」というものさしから一度離れて、中学受験を考えてみては――。こう提案するのは、探究学習の第一人者である矢萩邦彦さんと、「きょうこ先生」としておなじみのプロ家庭教師・安浪京子さんです。今回は未就学児の親御さんからのご質問です。

MENU ■やりたいことは「ない」ほうが普通 ■幼い子どもにフワッと中学受験をすすめるはよくない ■どんな教科でも知識は「実体験」があったうえで身につく ■中学受験の算数はトラウマを生みやすい

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■やりたいことは「ない」ほうが普通

安浪:未就学児はもちろん、ちゃんとやりたいことを持っている子って、どれぐらいいるんでしょうね。ですからこのご質問は拡大解釈すると、子どもに何の考えもない、まっさらな状態で中学受験をすすめるのはよくないのかってことですよね。

矢萩:将来にわたってやりたいことというのはないほうが普通ですし、あったとしても変わっていくのが前提です。やりたいことがあるなら、そこから主体的な活動を計画できますが、ないならないで問題ありません。とはいえ、どちらにしても未就学児に一般の中学受験の勉強に直結するような準備をさせるのは脳科学的にも不自然なことだし、あまりいいことではないと思います。親が子どもに情報や選択肢を提示するのはいいと思うんですよ。ただ、未就学児はもちろん、子どもの生活の主導権は、基本的に親が持っているんです。だから親が積極的にすすめるというより、「こういうの興味あるかな?」などと提示してあげて、反応を見たり、観察したりしながら進めていくのがいいと思うんです。

安浪:そもそもこの方は、「中学受験」という言葉をどういう意味で使っているのでしょうか?「勉強をさせる」という意味なのか、「場を選ぶ」という意味なのか。というのも、教育熱心なお家って、普通に小さい頃から勉強させているじゃないですか。私も昔は親から「医者か弁護士になれ」って言われて、小さい頃から公文をやらされていました(笑)。地方でしたから中学受験という選択はありませんでしたけど。子どもの意思に関係なく「うちの子は中学受験をするものだ」と決めているご家庭の場合は、やればいいと思うんです。子どもに対しても「中学受験をすると将来の選択肢が広がるよ」など言い方はいろいろできますし。

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安浪京子 矢萩邦彦
安浪京子 矢萩邦彦

安浪京子(やすなみ・きょうこ)/「きょうこ先生」として親しまれている中学受験専門カウンセラー、算数教育家。佐藤亮子さんとの共著『親がやるべき受験サポート』(朝日新聞出版)が好評。最新刊は『中学受験にチャレンジするきみへ 勉強とメンタルW必勝法』(大和書房)。

矢萩邦彦(やはぎ・くにひこ)/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える保護者のための「正しい知識とマインドセット」』(二見書房)。

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