今季限りでの引退を表明した“かなだい”
今季限りでの引退を表明した“かなだい”

“かなだい”という愛称で親しまれる村元哉中&高橋大輔は、驚異的な成長を遂げながら濃密な3シーズンを駆け抜けた。そしてその道程で、二人は数々の試練を乗り越えている。

【感動シーン】涙が抑えられない…演技後氷上でしっかりと抱き合う二人

 高橋が2019年12月の全日本選手権でシングルスケーターとしての活動を終えた後、20年に二人はアメリカ・フロリダに拠点を移し、アイスダンスのチームとして始動した。マリーナ・ズエワコーチの下で練習に取り組み始めたものの、程なくしてコロナ禍に見舞われる。一時は帰国を余儀なくされた二人は、マリーナコーチの指導をリモートで受けながら日本で練習する日々を送った。

 困難から始まった二人の道程だが、2季目となる2021-22シーズンに飛躍を遂げる。21年11月に行われたNHK杯とワルシャワ杯では2戦連続で日本歴代最高得点を更新、22年北京五輪出場に近づいたかと思われた。しかし、北京五輪代表最終選考会となる12月の全日本選手権ではリズムダンスでまさかの転倒。優勝を逃し、五輪代表入りはならなかった。

 しかし北京五輪代表が発表された翌日に二人は囲み取材を行い、代表枠を巡って繰り広げられた熾烈な戦いによってアイスダンスへの注目が高まったことへの喜びを語っている。

 そして22年の四大陸選手権で、二人は銀メダルを獲得した。日本代表として過去最高成績となるこの銀メダルは、五輪への道が絶たれても意欲を失わなかったことの証明でもある。

 さらに3シーズン目となる今季、グランプリシリーズ1戦目のスケートアメリカ(22年10月)は、苦境の中で迎えた試合だった。9月に練習拠点であるフロリダを襲ったハリケーンの影響でホームリンクが使えず、別のリンクでの練習を余儀なくされる。また試合前に村元が肩を負傷し、周囲から棄権を勧められるほど切羽詰まった状況だったという。

 村元は引退会見で、スケートアメリカを「今までの私のスケート人生の中で一番大変」な試合だったと振り返っている。しかし試合直前は練習ができなかったにもかかわらず「すごくいい演技ができて、チームとして大ちゃんとの気持ちもぐっと近くなった」と語った。

「『スケートアメリカがあったから、今の絆につながるのかな』と感じています」

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苦しむ高橋に「膝を貸してあげたい」