地震で大きな被害を受けたトルコ南部アンタキヤの街。2月16日(写真/アフロ)
地震で大きな被害を受けたトルコ南部アンタキヤの街。2月16日(写真/アフロ)

 背景には、トルコからシリアへ緊急支援を行うため、人の行き来がしやすくなっていることもある。

 結局のところ、トルコに住むシリア人被災者は支援物資だけではかなり足りないものがあり、それは購入しないと入手できない。さらに遺体をシリアに運んで埋葬するにも費用がかかる。

「なので、正直に言うと、彼らが一番必要としているのはお金です」

八方ふさがりのシリア難民

 限られた資器材や物資のなかで、トルコ政府が優先すべきは自国民の救出や支援であることは理解できると、小松さんは言う。

「でも、助けが必要な切羽詰まった状況にあるのは、トルコ人もシリア人も変わりありません。そのなかで、トルコ人に支援が優先されている。シリア人からすれば、自分たちはやはりよそ者でしかないのだ、という不安と不満が高まっています」

 このままトルコにとどまり続けるか、それとも内戦が続くシリアに戻るか、シリア難民の心は揺れる。

「昨年からトルコの物価は急激に上がりました。この地震を機にトルコでの生活をあきらめて、シリアに帰る人もすでにかなり出てきています。でも、シリアでは電気やガスなどの供給など、インフラが不安定ですし、再びトルコに戻ってくることはかなり難しい」

 彼らが願っているのは欧州で難民認定を受け、そこで生活を再建することだという。

「でも、欧州に渡るには1人7000ユーロ(約100万円)ほどが必要です。多くの場合、その費用を親族から借りて欧州に渡り、そこで働いて借金を返す。でも、それは経済的に余裕のある親族がいないとできない。もともとシリア難民はトルコ社会の困窮層であるのに加え、この地震で多くが家や仕事を失った。この先については、まだまったく考えられない状況だそうです」

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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【動画】「ユカ!」と呼びかけて被災したアンタキヤの街を撮影する小松由佳さんの知人